あなたはペットボトル飲料水、ジュースなどを飲んでいますか
皆さんはペットボトル入りの飲料水やジュースを飲んでいますか。最近ではペットボトル入りのワインまで売り出されているくらいです。しかし、このペットボトルにはそこに使われているプラスチックの可塑剤として ビスフェノールA(BPA)という化学物質が使われているのですが、この化学物質には長期的、年単位、に使用を続けるといろいろな病気を誘発する可能性があるのです。
最近の実験ではペットボトルの可塑剤として使われているbisphenol Aの毒性として、子どもの時からこのビスフェノールA(BPA)に暴露されていると成人になってから男性の性行動に影響を与える可能性があることが報告されています。つまり、シカネズミ(deer mouse)を使った実験では雄は雄らしさを失い、交尾相手を探すのに必要な空間ナビゲーション能力が劣ることを示していました。
Disruption of adult expression of sexually selected traits by developmental exposure to bisphenol A. PNAS June 27, 2011
勿論これは動物実験で、はたして人の場合に演繹することが出来るとの判断は早急かも知れませんが、このBPAの毒性は意外と無視されているようです。それはペットボトルの使いやすさにあるからです。なにしろ私たちの日常生活にはこのペットボトルが溢れており、またその逆にペットボトル無しの日常生活は考えられないのです。つまり、あまりにの便利さに注意が向けられ、そのメガ慢性毒性の影響は表面に出てこないのです。ちょうど携帯と脳腫瘍との関連性に相似ているのかもしれません。しかし、上記の動物実験結果を人に当てはめた時、現代の男性の男らしさの消失は案外と説明が可能かも知れません。日本では男性が草食系化しているのも案外このBPAで説明がっ可能かもしれません。
もっとも、似たような研究でもBisphenol A — or BPA —はtestosterone levelsを低下することが知られています。
Environ Sci Technol. 2010 Feb 15;44(4):1458-63. doi: 10.1021/es9028292.
Urinary bisphenol A concentrations in relation to serum thyroid and reproductive hormone levels in men from an infertility clinic.
Meeker JD1, Calafat AM, Hauser R.
いずれにしても、このペットボトルからのBPAの毒性については前から指摘されていたことで別に目新しいことではないのですが、その毒性に関して上記のような補足データが発表されるようになったことは今後いろいろな関連データが発表されるようになるかも知れません。もっとも、このことに関して、アメリカのNIH, National Toxicology Program、(2008 April 27)の報告では、BPAの毒性として胎児、子どもなどに影響を与える可能性、また乳がん、前立腺がん、注意欠陥・多動性障害(Attention-Deficit・Hyperactivity Disorder )、その他の疾患の発生に関与するかも知れないとの見解をしぶしぶながら既に公表していることは意外と知られていないようです。なお、このような懸念はアメリカのFDAもようやく2010年 1月 15日に発表しているのです。
確かに、普通のペットボトルからのBPAの溶出量は極めてメガ微量であり、「許容量以下のレベル」とされています。しかし、この許容量の概念は絶対的ではなく、あくまでも相対的な数字であることを理解すべきです。しかも、人におけるそのメガ慢性毒性については全くデータがないことが問題なのです。ちょうど、現在の福島原発事故に起因する放射能の許容範囲の設定の変動、そして今後10年後、20年後の影響と極めて似ているのです。つまり、放射能の影響は今後10年、いや 20年後、いゃもっと後になって現在の許容範囲の影響が出ることがまったく不明なのと同じ状態なのです。
つまり、たとえ許容量以下の微量であっても、その使用が年単位、たとえば十年、二十年も毎日ペットボトル水を飲んでいた場合の毒性の蓄積に関するデ-タはないのです。とくに猛暑の中で常にペットボトルを持ち歩いているときにはペットボトルの中の水温が40度近くにまで上昇する可能性があります。そうなると当然いろいろな物質がペットボトルから溶出する可能性が大きくなります。
いずれにしても、BPAの毒性についてはいろいろと情報が交差していますが、まあ、若い人、とくに子供にはペットボトル入りの飲料水はできるだけ使わないようにすべきなのですが、現実は全くその逆で若い人ほどペットボトル入りの飲料水をがぶ飲みしているのです。現在、このぺっとボトル入りの飲み物に関しては[ペットボトル症候群」という中での糖分の影響が論じられていますが、これはある意味ではペットボトル入り飲料の亜急性毒性に該当するのかも知れません。
ちなみにオーストラリアのある町ではペットボトル入りの飲料水の販売が禁止されていますが、これは環境上の問題からで、BPAの問題には全く触れていないのですが、長期的に見たら毒性問題の先見性があったものと後になって解釈される可能性があるかも知れません。これから夏にかけて炎天下ではペットボトル飲料も温度が上がり、その結果、BPAが溶け出す量は当然増加します。ある研究によりますとペットボトルを熱湯ですすいだ場合、BPAの濃度が55倍になるとのことです。ということはペットボトル入りの温かいお茶などは使わない方が良いかも知れません。とくに日本のように自動販売機がどこにでもあり、しかも常に暖かい飲み物が手に入る国ではBPAがペットボトルに溶け出す量は急激に上昇するので、そのような暖かいペットボトル入りの飲料を頻繁に飲んでいる男性は草食化しやすいのかも知れません。ましてや、ペットボトル入りのワインなどはあまり頂けません。
スーパーなどでペットボトル入りのミネラルウォターを重たそうにして買って帰る人を見ると、私にはああここにも将来のがん患者候補がいるな、とつい考えてしまいます。でも、これは私の考えすぎかもしれませんが・・・。私は飲料水や既成のジュース飲料などは瓶入りのものしか飲みません。
それにしても最近はペットボトル入りのワインが発売されているとか。このようなアルコ-ル飲料にペットボトルを使うのは考えものだと思うのです。アルコ-ルがBPAの溶出にどのような影響があるのかの試験をする必要があるのではないでしょうか。
なお、ペットボトルの再生は最終的には繊維としての役割もあるようで、最近の世界的な綿生産が減少しているためそれを補充するためにペットボトルが高値を呼んで、たとえばスイスから大量のペットボトルが盗まれて中国に輸出されているとのことです。たとえば一トンのペットボトルが五万円で取引されているとのことです。
でもそのような繊維から作られた衣類などの安全性はどうなるのでしょうか。話は少しずれますが、トイレットぺ-パ-はいろいろな紙のリサイクリングで作られているので場合によっては細菌が混入している場合もあるとのことですので、文字通り細菌学的には清潔な紙でない場合もあるようです。ですから、トイレの紙で眼などは拭かないほうがよいのです。
追記 (2012/3/31)
最近アメリカでこのBPAについての使用禁止の提案に対しFDAが現時点ではその使用を禁止するに十分なデ-タがないとの理由から、使用禁止の請願を却下したことが報じられています。しかし、それは現時点でのデ-タ不足というのがおもなる理由なのです。確かに現時点ではそのような理由は見つからないのですが、ことBPAの毒性に関しては超メガ長期毒性のデタが無いだけなのです。
http://click.jwatch.org/cts/click?q=227%3B67660643%3BjOpegVjHIBSODfbfJ%2B1MghyjqLs%2BXqxWYGdnIsqZa9M%3D
このように考えるとやはり幼児や子供にはペットボトル入りの飲み物は与えないほうがよいかもしれませんが・・・・。
追記(2014 Jan)
最近になって以下のような動物実験デタが発表されています。勿論、これは動物実験デタなのでただちに人の場合に演繹することには無理がありますが、ある意味ではかなり示唆に富んだ実験なのです。つまり、簡単に言うとペットボトルの使用が前立腺ガンを引き起こすかもしれないということです。
Prins GS, et al "Bisphenol A promotes human prostate stem-progenitor cell self-renewal and increases in vivo carcinogenesis in human prostate epithelium" Endocrinology 2014; DOI: 10.1210/en.2013-1955.
この論文に対してアメリカのペットボトル製造関係機関のコメントは例のごとく、これは動物実験デタであり、そこに使われているBPAの用量は人の場合の用量とは比較できないほどの多量などとのコメントが付けられていましたが、今までのいろいろな動物実験デタと人への演繹への可能性を考察した時、この実験デタはかなり意義のあるものになるのかもしれません。いずれにしてもこのようなデタに対する反論の一つにそこで使われている用量が取り上げられていますが、しかし、この種の反論で常にな欠けているのはメガ長期使用期間なのです。例えごく微量でも年単位での使用の場合の結果は誰も分からないのです。
追記(2014 Feb)
その後の研究によるとBPAは前立腺がんを引き起こす可能性が有るとのことです。
BPA Increases Risk of Cancer in Human Prostate Tissue
Published: January 7, 2014. By University of Illinois at Chicago
http://www.uic.edu
つまり、BPAに関しては前立腺に対して悪い影響を与えることはほぼ確実であり、問題はそのようなペットボトル入りの飲料を毎日飲んでいることが大きな問題なのです。しかし、現実には今ほどペットボトルがまん延しているような状況下ではその禁止はかなり困難になりますが、問題はそのような意識を各個人が持つことが大切なのです。
そこで考えたのですが、前立腺がんが見つかった六十才以上の男性を対象にして今までにどのくらいの頻度でペットボトル入りの飲料を飲んでいたかの疫学調査をしてみると意外な結果が得られるかもしれません。
追記(2014 March)
最近の報告ではプラスチック容器から溶出する phthalates and Bisphenol A (BPA)の体内濃度の高い男性の場合には妻が妊娠する可能性がかなり低下するとのことです。つまり、いろいろなペットボトル飲料を飲んでいる夫妻の場合には子供がなかなかできにくいということです。いずれにしても悪いことだらけです。したがって、若い男性がもっぱらペットボトル飲料水を毎日飲んでいて、そのご結婚してもなかなか子供ができにくいことです。
Immediate Release: Wednesday, March 5, 2014
High plasticizer levels in males linked to delayed pregnancy for female partners
NIH study
追記(2016 March)
最近、別途ボトルの毒性に関しての解説が載っていました。
http://a.msn.com/01/ja-jp/BBrlFUu?ocid=se
しかし、ここではBisphenol A (BPA)の毒性に触れていませんし、またメガ長期使用時の毒性に関しては「1本(500ml)の飲み物に溶け出しているエチレングリコールの量は、約0.000036gと計算されます。これも、影響がないと考えられる値よりもかなり小さいことになります。以上のことから、飲み物のペットボトルの人体への影響はほとんどないといえるでしょう。」と簡単に考えているのです。
その他にもペットボトルの毒性として、
PETのフィルムについて、95度の熱湯で4時間溶出試験を行ったところ、テレフタル酸が0.014ppm(ppmは100万分の1を表す濃度の単位、1ppm=0.0001%)、エチレングリコールが0.016ppm検出されました。テレフタル酸ジメチルは、ND(検出限界以下)でした。また、ポリエチレンテレフタレートのシートについて、同様の溶出試験を行ったところ、テレフタル酸が0.037ppm、エチレングリコールが0.072ppm検出されました。テレフタル酸ジメチルはNDでした。これらのデータも『食品用プラスチック衛生学』に掲載されています。
この実験結果をどうとらえればよいのでしょうか。テレフタル酸1%を含むえさをラットに2年間食べさせた実験では、異常は認められていません。同様に2%を含むえさを食べさせた実験ではオスの成長が悪くなり、5%を含むえさではオスとメスの成長が悪くなり、死亡率も高くなりました。しかし、腫瘍形成などの徴候はありませんと報告されています。
ただ、この実験では腫瘍への影響しか見ておらず。またその期間2年間だけでした。そしてBPAの毒性には全く触れていないのです。
追記(March 2018)
最近のアメリカでなされた研究報告(State University of New York)では、プラスチック・ボトルの中に入っている液体の中には0.1 mmのごく微小なプラスチック片が平均では一リットル中に10.4片が存在することが報告されています。これは平均値ですので、この調査結果ではそのようなプラスチック片(polypropylen, nylon, polyethylenterephthalat)が検査対象のプラスチックボトルの中に0 - 10 000片が検出されていたとの報告です。
調査対象としたペットボトルはアメリカの物、他の国からの輸入品など計250本のペットボトルを検査した結果なのです。このようなプラスチック片がどのような健康に影響があるのかは決定的なエビデンスはないのですが、がん発生要因、ADHS (Attention Deficit/Hyperactivity Disorder 注意欠陥・多動性障害 )要因などになっている可能性が高いとのことです。
このようなごく微小のプラスチック片を長年にわたり飲み込んでいるとすると十年後、二十年後の影響はかなりおおきなものになる可能性があるのですが、そのような調査研究は多くの研究者にとってはあまり興味のあるテマにはならないのです。換言すると、従来の毒性学の研究では短期間での容量依存性の毒性結果しか知られておらず、極めて長期間にわたる摂取に関する毒性学的研究は殆ど皆無なのです。
追記(May 2018)
最近の報道によると「ちびだら飲み、コ-ヒ-にに新風」との記事があり、小型のペットボトル入りの飲料水の販売が始まったとのことですが、サントリのデタではここ一年間で三億六千万本売れたとか。このような傾向は今後もますますいろいろな飲み物に発展するのでしょうが、その結果として長期にわたるメガ微量のBPAに体が暴露されることになるのですが、その影響は三十年後、四十年後にならないとわからないのです。、