ショッピングモール化したデパート/デパ-トが無くなるか ??
ショッピングモール化したデパート
現在のデパートは往時に比べ集客力が弱まり、その結果、地方によっては閉鎖されてしまうような状況で、まさにデパートの受難時代に突入しているのかも知れません。つまり、デパートの売り上げは下がり、店舗数が激減するなどまさに冬の時代に入りつつあるようです。そのためか地方のデパートを整理し、今後は都心部での集客を期待する動きがあるようです。でもなぜデパートが客離れをもたらしているのでしょうか。でもどうしてそのようなことになってしまったのだろうか。ある識者はデパ-トでの文化的な催し物が減った結果それを観に来る人が減り、その影響で売り上げも下がったとか。つまり、従来のデパートには単なるものを売る以上に文化的な催しによる集客力が低下し、その結果潜在的な購買客を失ったとか。でも本当にそうなのだろうか。この集客力について別の視点から考えてみた。
たとえば、現在のデパートの店内の商品配置に関しては大きな問題があるように思える。つまり、専門店の増加と言うことです。極端に言うと、都心のデパートのすべてが専門店化されているといっても過言ではないのです。とくにその傾向が強いのは服装品関係の売り場です。男性用、女性用ともにすべてが専門店に場所を提供しているパターンです。昔のように製品単位での陳列、販売方式は完全に姿を消しています。たとえば、男性が上着を買うためにデパートの紳士服売り場に行った場合、それぞれの専門店に立ち寄り、個々の専門店を順番に巡ることになりますが、これほど非現実的、非効率的な購入方法はないと思います。いざ実際に買い物をするときに不便を感じるのは、たとえば男性が洋服などを購入するようなとき、現在の紳士服売り場はそれぞれのメーカーの売り場が小さなブース内にずらっと並んでいます。つまり、専門店を一か所に集めた方式が取られています。これは女性用服装売り場も同じことです。しかし、この方式ですと、たとえば男性が上着を購入しようとしてもそれぞれの専門店全部を回ってみないと自分の好みに叶ったものを見つけるのは結構難しいのです。なにしろ、それぞれの専門店に自分たちの銘柄だけの上着が陳列されているからです。ところが広い売り場にある個々の専門店を順番に見て廻ってそれらのなかから自分の好みあったものを選ぶことは意外と時間、努力、忍耐が必要になります。なにしろ、専門店の数が多すぎるからです。さらにそれらの専門店には店員が一人か二人の場合が大半で、時としてはこれらの店員が客に対応しているときには辛抱強く待つか、あるいは諦めて他の専門店に行くかの方法しかありません。つまり、そこには従来のデパト店員だけの場合には即座に他の店員が応援に駆けつけたものが、現在の専門店制度では他の専門店の店員の応援を期待できないからです。一般的には男性は女性に比べて銘柄で品定めをする人は極めて少ないと思います。男性消費者のほとんどは自分の好みに合った衣装を選ぶのであって、メーカーを念頭に置いて購入する人は皆無に近いと思います。
つまり、現在のデパートの専門店化は郊外にあるショッピングモール、ショッピングセンターと全く同じことになり、デパートの特色は完全に消え去ってしまっていることです。このようにデパートとショッピングセンターとの区別が無くなりつつあることを消費者は無意識的に感じているのではないでしょうか。そのような認識で改めて男性用衣服売り場を眺めてみるいつも閑散としている気がします。確かに、女性の場合には銘柄に固執する人は多いかも知れません。ちょうど化粧品売り場のようにそれぞれのメーカー商品を目当てにデパート行くのかもしれません。しかし、男性はそのような傾向はまず皆無に近いのです。ですから、女性と男性の場合とでは消費者の好みが異なることを前提にし店内商品配置を考慮しては如何でしょうか。つまり、すべて均一的な発想にしないことです。ですから、場合によっては昔のような商品配置にし、専門店別の配置をやめることです。つまり、ワイシャツ売り場のように上着だったらすべての銘柄のものを一か所に陳列すればその選択も簡単ですし、購入時間もそれほどかかりません。ワイシャツとか靴のようなものはその売り場に行けばいろいろなメーカーのものが一か所に揃っているのと同じことをするのです。
デパトと言うのは基本的にはそこに行っていろいろなものを観ることによりほしいものを見つけて購入するのが本来の姿なのです。勿論、最初から目的のものを買うためにデパトに行くこともありますが、デパト本来の目的はいろいろなものをみて購入欲を湧き起こすという場所でもあるのです。
いずれにしても、現在のデパートの店舗内配置では男性が上着を買うのとワイシャツを買うのとでは一つのものの買い物をするにも係らずその選択様式が極端に異なるのです。本来、消費者が買いやすい商品展示がデパートの特徴であるべきですが、現在の展示方式ではデパート自身が販売・売り上げ努力を放棄し、いろいろな専門店任せにし、その場所代の上に胡坐をかいての殿様商売とも考えられます。やはり消費者の意向、心理を詳細に調査、研究し、それぞれの要望の高い店内配置を検討すべきではないでしょうか。さもないとデパートの特徴がどんどん消えてゆき、本来あるべきデパートの特徴がなくなり、近い将来には郊外のショッピングセンターと同じことになってしまいます。
似たような考え方はデパートの食堂にも当てはまります。現在ではデパートのレストラン街にはいろいろな専門店が入っていますので、一見論理的にも考えられますが、そのような専門店方式ですと、家族で食事するような場合、それぞれが好みのものを食べたいときにはやはり昔式のデパート直営の食堂、レストランが必要だと思います。そこには曲がりなりにも中華あり、お寿司あり、スパゲッティありで、家族全員がいろいろな食事を一緒に楽しめることが可能になるからです。ですから、もしそのようなレストランが無くなれば家族連れのお客さんはデパートでの食事を敬遠するようになる可能性も高いのです。それにしても、最近のデパート直営のレストランにはあまり活気がなく、仕方がなく営業している感じもします。中には昔式のデパ-ト直営のレストランが撤廃されたり、規模が縮小されている場合もあるくらいです。ですから、最近のデパ-トの食堂街には家族連れがほとんど見られません。むかしのようなお子様ランチなどはもう過去の産物なのかも知れません。
デパートの活性化はやはり昔のコンセプトを参考にした店内配置を臨機応変的に独自に設定し、顧客指向を改めて研究すべきかも知れません。日本のデパートはいまだ世界に誇れるものが沢山あります。店員のサービスから始まって、礼儀正しさ、包装の技、親切心など外国のデパートとは雲泥の差がいまだに存在するのです。それらの特徴,英知を商品配置にも反映出来ないものでしょうか。海外では一般的にはデパ-トは安物を売っているところという概念すらあるのです。とくにこのような傾向は欧州大陸では顕著です。
最近の報道ではデパ-トの近郊支店が軒並みに撤退を始めているとのことですが、これなどもおそらく上記のようないろいろな要因がその原因かも知れません。
さらに、ある週刊誌には「デパトが無くなる日」のような記事がありましたが、確かに将来的にはデパ-トは無くなるかもしれません。ここで言及しましたような衣装売り場の問題もありますが、顧客のことを考えて店内の配置換えをする必要があるかもしれません。
確かに、デパトに行けばなんでも揃っているので便利かもしれませんが、電気製品などはそれ専門のデパト並みの店が都心にあるので、デパトではそのような電気製品を置いていなくなりました。
つまり、デパトは高級品とか女性専用品とか、顧客の層を明細化して店内改造をすべきかもしれません。例えば、書籍売り場などは今後はどんどん縮小、ないし廃止に向うのではないでしょうか。
追記(2019 Nov)
最近の新聞の記事にあるデパトが食料品売り場を拡大して売り上げが更新しているとか。
その原因は「平日の昼時、同店と近隣商店を歩いた。地下の食料品エリアはまずまずのにぎわいだったが、同駅近くのビル1階にあるスーパーにはかなわない。また、衣料品エリアは、隣り合う「ユニクロ」との勢いの差が明らかだった」との観察からだったとのことでした。
これは当然でス-パ-に行けば一か所で似たような商品がいろいろと選べるからです。これと同じ理屈で、ユニクロに行けば、たとえばズボン売り場に行けばすべてのズボンを一か所で選べるからです。