医師の(も)不衛生
医者はほとんどの場合、白衣を着ていますが、あれは何のために着ているのでしょうか。おそらくほとんどの人は衛生上の目的で医者は白衣を着ているものと理解していると思うのですが、意外と知らない事実が最近の医学雑誌に発表されています。
いずれにしてもあの白衣は本来はちゃんと前ボタンをかけて白衣を正しく着るべきなのですが、多くの医者は前ボタンをまったくかけずに白衣が前開きなのです。特に、テレビに出てくる医者のほとんどはあの白衣は前開きなのです。でもこのような状況に関しては日本医師会などは全く無関心なので、テレビとか映画の影響で病院の若い医師などは白衣は前開きにしておくのが格好いいと思っているのではないでしょうか。このような現象はまさに世界共通で欧米のテレビに出てくる医師のほとんどが、つまり99.9%が白衣は前開きなのです。このことは何も日本のテレビに限らないのです。欧米のテレビのいろいろな劇映画的なプログラムに出てくるほとんどすべての医師の白衣は前開きなのです。つまり、テレビで放映されているいろいろな物語に出てくる医師の役割をしている俳優のすべてが白衣は前開きなのです。これは世界各国共通なのです。こうなると、では実際の病院などで働いている医師の白衣の着方はどうなっているのか知りたいものです。
最悪の場合には白衣をぜんぜん着ていない場合もあるのです。いずれにしてもあのような前開きで白衣を着用しているほうが格好が良いのかも知れません。まぁ、相対的に見て白衣を前開きにして病院内を歩いている医師が多ければ多いほどその病院の衛生的観念は低いものとの判断は出来るようです。
このことに関連して最近発表された二つの論文には極めて驚くべき事実が述べられています。
Infection Control and Hospital Epidemiology Band 35,S.107,2014
May Clinic Proceedings Bd.89, S.291, 2014
まず、一般的には人間の体内には1.5kgの細菌が存在するのです。もちろん、体表、腸内、などに存在する総細菌の重量なのです。確かに、腸内の大半は細菌の塊であり、糞便はその大半が細菌なのです。最近では健常者の糞便を治療目的で第三者に移植する方法が導入されているのです。
一般的に、医者が患者を診るという行為は出来るだけ衛生環境を考慮していなければならないのです。患者は何らかの疾患をもっているので、ある意味では身体の免疫能が低下しているので、そのような患者に接する医者は出来るだけ清潔な状態で患者に接しなければならないのです。
ところが、医者の多くは何の目的で白衣を着ているのかとの認識がかなり低いのです。あれは伊達に着ているのでもなく、また医者としての専売特許でもないのです。このような観点から、前記の論文では医者が白衣の下に着ている洋服の衛生度、たとえばネクタイは70%の医者はまったく洗濯にだしていないとのことです。ある意味では白衣から覗いているネクタイは細菌の塊かもしれませんよ。さらに、医者が着ている白衣の洗濯度は平均すると11日間も洗濯に出していないとのことです。
最近、あるサイトにこのことに関連した調査が報告されていました。この調査によると、
日常診療で着る白衣などの洗濯頻度を尋ねたところ、「毎日」は男性(1518人)で12.3%、女性(239人)で18.0%、「2-3日に1度」は男性24.8%、女性33.5%で、「2-3日に1度」以上の頻度は男性計37.1%だったのに対し、女性では計51.5%となっていました。
それと似たようなことはあの聴診器なのです。あれもほとんど消毒はされずに何回と無くそのまま使われ、さらに医者によってはあの聴診器を首にかわしているのも非衛生的なのです。つまり聴診器を首から掛けて診療している場合があるのですが、首から聴診器をかけるのは感染対策上よくないのです。もっとも、病院では聴診器の身体に当てる部分を毎回消毒しているところや、入院患者の場合には患者専用の聴診器が置かれているところもあるので、一概にはなんとも言えません。
このように医者に診てもらうときに肝心の医者がそのような不衛生の状態であることを患者は意外と気がついていないのです。ある意味では医者は患者に細菌感染を無意識的にしていることにもなるのです。しかし、現実にはこのような不衛生状態がもたらす影響は極めて小さいので、患者としてはそれほど気にすることは不要かもしれません。でも患者は病人であり、場合によっては免疫能が低下している可能性もあるので、医師は必ず清潔な白衣を着て、ちゃんと前ボタンをかけるべきなのです。
でも、以前に医療界で「患者様」なる表現が使われていましたが、本当にそのような考えがあるのだとすると白衣を前開きにして診察すること自体が「患者様」には申し訳ないと考えるのですが、最近はそのような「患者様」なる表現はいつのまにか消えてしまっているようです。
なお、このボタンかけは相手、つまり患者に対して正しく向き合う、という気持ちも必要なのです。例えば、紳士が背広を着ているときは多くの場合、前ボタンはかけていませんが、演説するときとか、偉い人の前に出るときには改めて前ボタンをかけます。たとえば、テレビなどでの会見の様子を注意してみてください。何かを説明したりするときとか議会などで演説するときとか、あるいは偉い人と会談するとき、など今まで背広の前ボタンをかけていなかった人の多くは、改めて前ボタンをかけて演説とか会見をするのが普通なのです。これは間接的に相手に対して正しい衣装という感覚から必ず前ボタンをかけることなのです。
最悪なのは、一部の医師は「患者様」なる表現を無意識に使っていることもあるようですが、上記の政治家などの会合前の動作のことを考えると、「患者様」の前でも気を正して、白衣のボタン掛けをしてほしいものです。もっとも、最近は患者様なる表現は完全に消えてしまっています。
同じことは、上記のようなたんなる衛生的見地からではなく、やはり医師と患者という人間関係から、患者に向かうときは白衣の前ボタンくらいはかけるべきなのですが、多くの医師はそのような感覚で患者に対しているとは考えられないのです。ある意味では、そのようなだらしがない白衣の着方は、ある意味では患者を見下しているともとらえることもできます。以前に、「患者様」のような表現が使われたこともありますが、これほど患者を馬鹿にした表現はないのです。そんな表現よりも、患者に相対するときは白衣の前ボタンをちゃんとかけて、対応すべきなのですが、・・・・・。
極端に例になるかもしれませんが、もし男性がズボンの前開きのチャックを閉めていなかったらどうなるのでしょうかね。
追記(2018 Oct)
似たような問題が指摘されているのは病室の区切りをつけるかカテ-ンの衛生状態が報告されています。
病院で患者のプライバシーを守るために間仕切りとして使用されるカーテンが、危険な薬剤耐性菌の温床となりうることが、マニトバ大学(カナダ)のKevin Shek氏らによる研究で示唆されていました。
「American Journal of Infection Control」 2018/ Sept)
Shek氏らは今回、マニトバ州の州都であるウィニペグのヘルスサービスセンター熱傷/形成外科の病棟で使用されている、クリーニングしたばかりの間仕切り用カーテン10点を対象に細菌の汚染レベルを調べた。このうち4点は4つのベッドが配置された大部屋(4床室)で、4点は2つのベッドが配置された部屋(2床室)で、残る2点は患者や看護者が直接には触れないエリアで使用されていた。なお、これらのカーテンの汚染レベル調査は21日間にわたって実施され、 その結果、クリーニング後に所定の場所に吊るされて以降、カーテンの汚染レベルは徐々に悪化し、14日後までに調査したカーテンの88%で患者に重篤な状態をもたらす可能性があるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が検出されたとのことです。
つまり、病室の間仕切に使われているカテンは患者や病院関係者が無造作に触るので細菌汚染の可能性が高いとのことです。
追記(2023 Nov)
最近の記事によると、最近では看護婦のナ-スキャップを感染対策上の理由から廃止するようになっているとのことですが、そのような屁理屈から言えば、医師の白衣も、上述のように、廃止すべきかもしれません。
追記(2024 Okt)
最近の報道によると、日常、毎日のように使っている歯ブラシはビ-ルスVirusの天国だとの報告があるのです。(Frontiers in Microbiomes,2024)
でもこんなことをまじめに考えたら、なにも使えませんよね。
これと同じことが、医師の白衣にも言えるので、このブログに私がその非衛生状態を書いても、現実にはまったく意味がないのかもしれませんね。