「誰も知らなかった常識の背景」(絶版)
かなり以前(平成十五年)に私が書いた本の紹介です。残念ながらこの本は現在は絶版になっていて入手はかなり困難ですので、その簡単な紹介とともに全文を読まれたい人への紹介です。
「誰も知らなかった常識の背景」
はじめに
海外と日本とでは歴史、文化、民族、習慣、地勢などの違いがあるのは当然ですが、それらのちがいが私たちの日常生活に直接、間接といろいろに影響しています。しかし実際にそのような影響、ちがいを知る機会を日本にいてはなかなかえることは困難です。普段、我々が何気なく考えていること、食べていること、行動していること、などが海外ではとんでもないこであったりします。たとえば、日本食の場合、お茶碗んやお碗などは食べる時にはちゃんと手に持って食べるのが普通で、これらを西洋料理のお皿などのようにテ-ブルに置いたまま食べることは犬食いとみなされ、日本では最低のしぐさになります。その逆に、西洋料理の場合には出された皿を手で持ちあげて食べることは禁忌になります。また、お隣の韓国では日本のように手でお茶碗などを持つことは物乞いみたいだと考えられ、誰もしないのが普通とのことです。これほど大きな違いはがあることを知らないで韓国で日本式の食べ方をしたらひんしゅくをかうことになります。つまり、日本では当然の常識が海外ではかならずしも常識としてとおらないことがあります。常識は国、文化、時代によってさまざまにことなります。普段当たり前と思っていることにもそれぞの背景があることを知ることは意外と難しいことがあります。
もちろん、このような常識の相違の存在を認識することはたしかに大切なのですが、お互いにそれぞの生活習慣・環境などを比較、検討してよいものはよいものとしてそれらを積極的に取り入れることができたら私たちの生活環境もさらに向上するかもしれません。これはなにも内なるものを捨てて外なるものをなんでもかんでもどんどん取り入れるということではなく、私たちの生活環境を向上、改善してより快適な人間生活を築きあげるという観点から考えれば十分意義のあるものです。また、海外に出掛けるような場合には海外での生活がより一層快適になることもありえるのです。
今までの習慣、常識を我々の昔からの習慣、常識だからと、時と場合によっては頑固なまでに固執するのではなくあらためて取り入れることができるかどうかの検討だけでもする価値がある場合は意外と多くあるものです。そのためには海外では一体どのようになっているのだろうか、われわれの常識はどのような経過で常識となっているのだろうかとの情報をまず入手することも必要です。ただ、ここで注意しなくてはいけないのは海外といっても実に様々な国があり、それらの国々では実に様々な環境、習慣、生活様式などが存在することです。ですから、ただ一言で海外では、と片づけられないのです。日本でよく使われている表現のひとつに「欧米では」がありますが、ひとつヨ-ロッパだけをとっても南と北とでは気候、民族もことなり、生活習慣、考え方なども大きくことなります。ですから、日本で頻繁に使われる表現、「欧米では・・」の表現は実は無責任、無知をさらけ出し、無意味、あいまいな表現なのです。すくなくとも、南欧、北欧、西欧、東欧の区別ぐらいはしてほしいものです。しかし、そうするためにはそれなりの正しい知識がないとそのような詳細な表現を使えなくなります。ですから、日本ではあいまいに「欧米では」、の表現が気楽にいまだに使われているのかもしれません。丁度、その逆に欧米人が「アジアでは・・・」と日本やカンボジャやタイなどと一緒に論じるのに相似ています。それにしても、「海外では」とは言わずに「欧米では」と表現すること自体が明治維新以来の欧米に追いつけ政策がいまだに尾を引いていることになります。「欧米では・・」は実は明治維新の政策用語だったのです。
さらに海外事情を調べる場合でも、ただ単に表面的な観察、視察だけでは本当の姿を知ることはできない場合がよくあります。たとえば、最近は日本の地方都市で、市電を復活させる動きがあるようですが、それに関連した日本からの海外視察団の新聞記事にはかならず、「ヨ-ロッパでは市電がかなり復活しているが・・」、とあります。しかし、これほどいい加減で無責任な表現はないのですが、日本ではごく当たり前の表現として認容されています。ヨ-ロッパの都会では日本同様に市電は昔からありましたが、日本のように簡単に廃止されなかった都会がかなり残っていたのです。それを一回のヨ-ロッパ視察でかなりの都市に市電網が発達しているのを目の当たりに見て驚嘆し、これほどまでに市電
が復活しているとは、となるのです。ちょうど、戦後最初の日本からの農協観光団体客がロ-マを見物し、コロシアム(古代ロ-マ遺跡)の前で「へぇ-まだイタリアには戦争中の空襲の跡がそのまま残っているんですね」と感嘆したとか。まさに、これと似たような観察、理解が今でも日本人の一部に存在することになります。
たしかに市電に関しては日本人が日本の都市の実情から判断すれば、一回のヨ-ロッパ視察旅行でそのよな印象を受けたのもやむをえないのかもしれません。しかし、市電が一旦廃止された都市にまた市電を復活させるのは日本と同様にヨ-ロッパでも極めて難しいのです。現在のヨ-ロッパの都市にみられる市電の現状を本当に正しく理解すると、市電を現状のように維持することがいかにむずかしかったかを読み取るべきなのです。 ともかくこのような観点から日本とヨ-ロッパとでのいろいろな日常生活体験を通して日本人の眼からみた文化、習慣の相違に焦点をあてて書かれたのが本書なのです。(なお、本書では原則としてアメリカは対象にしていしません。それは著者はアメリカでの経験があまり無いので、簡単に欧米ではの表現は用いられないからです。)
本書は長年にわたってヨ-ロッパに生活の場を築いてきた著者が日本とヨ-ロッパとの間に介在する様々な文化、習慣などの相違点を実際の生活体験を通して比較し、誰もが気楽に読めるようなエッセイ風にまとめたものです。したがって、日欧文化比較論のような堅いものではなく、実際生活に関与したいろいろなテ-マを取り上げて面白く読めるように書き上げました。ただ、すでに記述しましたように、ふたつの異なった文化をただ単に比較するだけでは余り意味のないことですので、一歩進めて、そのような相違を認識することにより、お互いの理解を深めることにもなります。さらに、それぞれの違いを単に違いとしてのみ捉えるのではなく、それぞれの背景をも理解し、最終的にはそれぞれの長所をどのように私たちの日常生活に取り入れて融合を計るかへの考察も必要になります。また、本書を通して、逆に日本にもよい文化環境があることを再認識するよい機会になるかもしれません。
目次
はじめに
生活習慣編
その1: 日本ではどうしてドア-は外開きなのでしょうか「外開き文化の悲劇」
その2: 青信号は本当は緑信号なんです「単色文化と複色文化」
その3: 水は天からの授かり物「風呂文化とシャワ-文化」
その4: カクシの心理は海外では通用しません「カクシ社会とアケッピロ社会」
その5: アァ、主人と手をつないで歩いてみたい「お辞儀社会と握手・抱擁社会」
その6: 嫌いなものは外に投げ出しましょう「内向社会と外向社会」
人間本質編
その7: あなたは今日何回笑いましたか「瞑想文化と笑い文化」
その8: 日本から匂いがなくなる日「体臭社会と無体臭社会」
その9: 脚が短い日本人は損をする「胴短社会と胴長社会」
その10: 喜怒哀楽の表現はそとにだすものなのです「無の感動と有の感動」
社会編
その11: 歓迎会は自分のホケットマネ-で「同属社会文化と自己中心文化」
その12: 駅の改札は必要なんでしょうか「自己責任と組織責任」
その13: 日の丸を見たことがありますか「国旗を必要とする国、必要としない国」
その14: 身分証明書ってなんですか「写真付き身分証明書の必要性」
食習慣編
その15: ごはんなしの食事はできませんよね「おかず社会と主食社会」
その16: 日本料理はやはりおいしい「ソ-ス文化と煮付け文化」
その17: 犬肉も鯨肉もにたようなもの「食文化摩擦は歴史的相互理解が必要」
その18: 食器が文化に影響しているのかもしれない「皿文化と小鉢文化」
言語・交流編
その19: 英会話の勉強はあきらめなさい「意存言外社会と有言伝達社会」
その20: 日本語を国際語にしましょう「自国語を卑下する日本人」
その21: 海外からの外国人を招くことは呼民なのです「移民と呼民」
その22: 観光資源を無駄にする国「観光先進国、観光低開発国」
その23: 海外在住日本人の問題「海外在留日本人の保護と二重国籍問題」
私がかなり前に書いた本に「誰も知らなかった常識の背景」があります。 この本はどちらかと言うと日本と欧州とでの生活環境に関連した相違点、起源などを比較しながらいろいろな見地から随筆調に書かれたものですが、既に絶版になっており、新本は書店で購入できません。 現在、この本は無料電子書籍ライブラリwww.ipad-zine.comから無料でダウンロドして読むことが出来ます。このサイトを開いて私の名前、鈴木伸二、で検索すると私が書いたいろいろなものを読むことが出来ます。 なお、最近になってこのサイトは停止されていますので、もしこの本の電子版が欲しい方は私に直接お申し込みください。無料で送信いたします。 ssuzuki@bluewin.ch この本の内容の一部は以下のようなテマがあります。 生活習慣編(日本ではどうしてドアーは外開きなのでしょうか?「外開き文化の悲劇」 青信号は本当は緑信号なんですけど「単色文化と複色文化」 ほか) 人間本質編(嫌なものは外に投げ出しましょう!「内向社会と外向社会」 あなたは今日何回笑いましたか?「瞑想文化と笑い文化」 ほか) 社会編(歓迎会は自分のポケットマネーで開くんですよ!「同属社会文化と自己中心文化」 駅の改札は本当に必用なのでしょうか?「自己責任と組織責任」 ほか) 食習慣編(ご飯なしの食事はできませんよね「おかず社会と主食社会」 日本料理はやはり旨い「ソース文化と煮込み文化」 ほか) 言語・交流編(英会話の勉強はあきらめなさい「意在言外」社会と「有言伝達」社会 日本語を国際語にしましょう「自国語を卑下する日本人」 ほか) この電子版を読まれて何かコメントがありましたら頂きたいと思います。 なお、この本の奥付にあるメイルアドレスは以下に変更されています。 ssuzuki@bluewin.ch よろしくお願いいたします。