私の言語心理学(1)
辞典的には、心理言語学(psycholinguistics、または言語心理学)は、人間が言語を獲得する過程について研究したり、言語の認知処理、言語の生成過程や方言の出現など、言語学の中でも特に人間の心理的過程と結びつけて研究する言語学と心理学の中間の学問である、と説明されています。
このような分野の研究はあまりなされていないようですが、私があることに気が付いたことがあり、なんとなく言語心理学というような表現がとっさに浮かんで、調べてみると上記のような説明が見つかったのです。
この「あること」とはどんなことかと言いますと、たまたまある人を長らく見ていなかったのですが、ある時その人を遠くから見つけて、ああ、あの人だと一瞬理解したのです。この人はイタリア人で、私とは時折イタリア語で会話を交わしていたことがあるのです。その人を見た一瞬、すぐそばにいた人にぶつかったので、通常の場合にはフランス語のPardonという言葉が出てくるのですが、この瞬間には普段は全く使われてないイタリア語のScusi (ごめんなさい)というイタリア語の単語がとっさに出てきたからです。つまり、イタリア人という一瞬の理解の中では脳の細胞にイタリア語に一瞬切り替えらていたのかもしれません。その結果、その瞬間には普通の状態では全く使わないイタリア語の単語が一瞬、私の脳細胞から飛び出したわけです。
私の家庭内での日常語はドイツ語なのですが、以前に長いことイタリアに滞在し、結果的にはイタリア語は私の最初の外国語であるので、今でもイタリア語が頻繁に出てくるのです。そのわけは、フランス語を習うというよりは慣れるという意味で毎日のようにフランス語のテレビも見ているのですが、多くのフランス語の単語はイタリア語の知識から理解できるのです。
たまたまある医学雑誌に、幼児に話しかけるときに顔や身体をさすったりしながら話しかけると、その幼児の言葉の習得が早いという事が報告されていました。これなども言語心理学領域の対象になるのではないでしょうか。でも、このような効果を知っている人は極めて少ないのではないでしょうか。もしかすると、このような観点から考えると、幼児に話しかけるときには体の接触が効果的であるのかもしれません。
これと似たような行動に、幼児が初めてトイレに座っているときに母親がしばしばすることは、初めてのトイレの便座に座っている幼児に、シ-- 、シ~~と話しかけながらおしっこを促させて、待っていることはよく知られていますが、これもある意味では言語心理の実際、実施になるかもしれませんね。これなどは知らずに、言語心理学の活用例なのです。