海外留学の方法 イタリア留学の例
現在の日本の若者の海外に出かける熱気がどんどん下がっていて、最近では海外の大学に出かける人はかなり減りつつあることが指摘されています。その最大の傾向はアメリカの大学で勉強する若者が極端に減りつつあることが指摘されています。とくに比較されるのは中国や韓国の学生のアメリカの大学留学生数で、最近は日本からアメリカに留学する若者の比率がどんどん下がっていることです。
このことに関して、アメリカの大学関係者からはもっと沢山の日本人学生がアメリカの大学に留学すべきであるとのコメントが出されています。でもこのコメントはアメリカ人の時代感覚のずれを示していると思うのです。というのはもし日本人の留学生が減っていることに対して懸念を持つならば他の欧州からのアメリカへの留学生についても言及すべきなのですが、欧州と日本とでは状況が同じとは考えないのでしょうか。
つまり、欧州の若者がアメリカの大学にわんさと留学すべきであるとは発言せず、彼らに対してはあまり関心が無いように、日本も昔とは異なりそのようなアメリカ留学への関心が減っていると理解すべきだと思うのです。このことを裏返せば、そのアメリカの大学関係者はアジアはいまだ開発途上国だからもっとアメリカに留学すべきとの暗黙の解釈があるのです。ある意味では日本の学生はわざわざアメリカまで出かけて箔を着けて帰ってくるという時代はとうに卒業してしまったものと解釈すべきかもしれません。
このような日本の若者の海外志向の減少はある意味では当然のことなのです。今日のような情報社会では海外の情報は瞬時に得られるので、戦後まもなくの頃のようにわざわざアメリカに出かけて勉強する気にならないのかもしれません。
それとそのような日本の若者の傾向を現在の中国や韓国と比較することはあまり意味が無いのではないでしょうか。往時は日本からアメリカの大学に留学する学生はかなりの数になり、あまりに希望者が多く、正規にアメリカの大学に留学することはかなり難しい時期がありました。そのときには中国や韓国からの学生は極めて少数ないしはゼロであり、ちょうど現在の状況とはまさに対比的な状況だったのです。
したがって、たんなるアメリカ留学学生の数だけを比較してもあまり意味は無く、それぞれの国内事情、学生の価値観の変化などがそのような現象の背景にあるものと理解すべきではないでしょうか。したがって、単なる学生数だけを比較して、日本人学生の海外学習熱の低下を嘆いてもあまり意味が無いでしょう。
それでも、若いうちに海外の大学とか研究所に行くことは大きな意味があり、出来ればいろいろな国に出かけて欲しいものです。特に日本のような島国に住んでいると、とかく国際的な観点からのものの見方が出来なくなり、最終的には日本にとっても大きなマイナスとなるのです。
ここで海外に勉強に出かけるといってもいろいろな場合があります。なお、本稿では単なる語学留学は対象外としています。
例えば、大きく分けてその可能性を分析しますと以下のような状況が考えられるのではないでしょうか。
1)高校とか大学に在籍中に一年とか二年間海外の学校に留学する
2)大学を卒業してから海外の大学、研究所に留学する
3)大学を卒業して就職してから業務に関連した大学、研究所などにある期間留学する
これら三つの可能性はそれぞれマイナスの面とプラスの面とがあり、どの時点でどの方法を選ぶかが大きな問題になります。ただひとつだけいえることは海外の大学に行く場合には日本の大学を卒業してから行ったほうがいろいろな観点から有利なのです。特に日本の大学を卒業していれば、国によっても制度は異なりますが、多くの国ではその国の大学の全過程を再履修する必要がないからで、途中編入することが出るのです。したがって、そのような例では相手国の大学によっても異なりますが、一年半か二年の学習で必要単位を取得してその大学卒の免状を手にする子ができるのです。
そのほかにも大学院に留学して、その国の修士号、博士号を取得することもできるのです。もっとも、日本の大学で専攻した分野とは全く別な過程となると日本で履修した単位はあまり活用できません。ここで言及した途中編入の意味は日本と同じ学部を他の国で卒業する場合になります。この方法の得点は、一年か一年半くらいの習得期間でそのくにの言葉をかなり身に着けることができ、しかも、同じ学部であるので、日本での知識がそのまま生かされる可能性が高く、短期間でその国の大学卒の免状を手にすることができるというメリットがあります。
三番目の日本での就職先から海外に研究目的で海外の大学、大学院、研究所などに留学することはその職場環境いかんにより、かなりその可能性が狭まりますが、可能性は探せは意外とあるものです。そこでひとつの可能性として筆者が選んだ経験を述べてみます。
私は日本の大学を卒業して国立の研究所に勤務したのですが、その業務関連で海外に出てみたいとの漠然とした希望がありました。そして考えついたのはそれぞれの国が提供している国費留学生制度を利用することでした。周知のようにいろいろな国が海外の学生や研究者に対して国費留学制度を提供しています。確かにその年間枠はあまり大きくはありませんが、それでも国によっては二桁台の学生、研究者が利用できるようになっています。確かに、このような制度を利用するときの問題は相手国如何によってはその競争率はかなり激しくなり、またその選抜試験もありますので、必ずしも簡単ではないかも知れません。
私の場合には実際の業務に関連した相手国を選ばなくてはならなかったのですが、その可能性のある国はドイツ、フランス、イタリアしかなかったのです。周知のように相手国の国費留学制度を利用するにはその国の言葉ができなくては最低限の資格がなく、そのための選抜試験には該当国の言語での試験があります。そうなると、当時の私にはこれらの外国語の知識はほとんどゼロに近く、とてもその国の言葉での試験に通る可能性はゼロであったのです。
しかし、それぞれの選抜試験の内容を検討したところイタリアにいく場合には例外項目があったのです。それは医学、薬学などの自然科学関係のイタリアの大学、研究所に行くための人に対しては例外として語学試験は英語でも可とあったのです。つまり、イタリア政府としては芸術、美術、音楽分野ではイタリア留学を希望する人はごまんといるのですが、それ以外の科学分野の人たちにも来てほしいとの願いがあったのです。それでそれらの分野の人たちには例外として選抜試験は英語でも可となっていたのです。ちなみにその当時のイタリア国費留学生の年間枠は十人でしたが、試験結果の発表ではやはり音楽・芸術関係の人も多かったのですが、自然科学分野からは三人が入っていました。そのときの留学生同期には声楽の東 敦子さんがいました。
このように相手国によっては意外と似たような例外項目があるので、やはり詳細に検討する必要があることです。ですから、スエ-デンとかデンマ-ク、オランダなどはそのような可能性があるかも知れません。ですから、相手国の国費留学制度を利用するときには海外留学は英語圏だけの大学、研究所しか可能性がないと考えるのではなくもっと柔軟に考えてみてください。なにも留学は英語圏だけではなく、ある意味では無尽にあるのです。言葉なんて、その国に行って三か月くらい勉強すればなんか講義についていけるようになるものです。
もちろん、このような国費留学生制度以外にも自費留学という方法もありますが、これにはかなりの出費が伴いますし、既存の留学援助団体を利用するといろいろな問題があるようです。たとえば、私の知人はイタリアに留学したのですが、現地では日本語の通訳がついていたような場合もありました。このような留学は最低だと考えられ、あまり意味がありません。
もっとも、中には、海外に留学して帰国したときに就職がどうなるかとの心配があるかもしれませんが、一度海外で勉強したいと考えて実行する人ではそのような考えがあったら、いっそのことその国に残留するくらいの気力は持っているはずですよ。
追記 (2014 March)
最近では「留学へトビタテ」とのモット-のもとに文部科学省が留学支援制度を始めているようで、もちろんこのような制度を利用することも可能になります。要は、よく探せば結構いろいろな方法があるものです。単に規制の制度だけを念頭に置くのではなく、例えば、論文などから自分の専門分野での相手先を選んで、大学とか研究所に直接手紙を書いてみることです。相手によっては意外と真剣に受け入れを考えてくれる可能性もあるのです。