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2020年9月21日 (月)

医薬分業から医療分業へ

医薬分業から医療分業へ ??

 

 

2 020年9月1日、改正医薬品医療機器等法(薬機法)が施行され、服薬期間中のフォローアップの義務化やオンライン服薬指導が新たな薬剤師の業務になっているようです。
同法の施行は段階的に実施されることになっており、地域連携薬局、専門医療機関連携薬局といった都道府県知事による薬局の認定制度や、薬局開設者に対するガバナンスの強化、添付文書の電子化については、21年8月1日からスタートするととなっています。

 

「フォローアップ」については、調剤した薬剤の適正な使用のため必要があると薬剤師が"認める場合"には、患者の当該薬剤の使用状況を継続的かつ的確に把握するとともに、患者などに対して必要な情報提供または薬学的知見に基づく指導を行わなければならない旨が、新たに法律上で義務付けられたとのことです。ただこの文面を文字通りに解釈すると「薬剤師が認める場合」の表現なのです。常識的に解釈すると薬剤師がその必要性を認めなければフォローアップの必要性がなくとも違反にはならないと理解できるのです。つまり、2 020年9月1日からの改正医薬品医療機器等法(薬機法)は一応法律とのことですが、そこで規定されている「フォローアップ」にはかなりの柔軟性があることです。法の実施に際してその必要性如何は薬剤師本人が決めることであり、まさに「ザル法」の典型例ではないでしょうか。

なお、日本の医薬分業で頻繁に使われている表現に「調剤」という用語があります。では、この調剤という行為は何を意味するのでしょうか。調剤とはいろいろな単一医薬品(成分)を総合的に、しかも薬理的に配合して、ある疾患に対する治療効果を最大にすることが出来るように組み合わせる行為になるのです。医薬分業が実施される以前には一部の薬局が自ら色々な単一薬品を配合して、その薬局の医薬品として販売していたことがあったのですが、現在の薬局にはそのような狭義の調剤を自らの薬局ですることは皆無になってしまっているのです。それでも、現実には調剤薬局という名称が大手を振っているのです。しかし、現実の調剤とは既成の製剤を取り出して分包しているのに過ぎないのです。つまり、調剤薬局は実際は「分包薬局」と言っても過言ではないのです。ですから、処方箋に書かれている医薬品名は有効成分名ではなく、製薬会社が既に医薬品として製造している既製品名が記載されているのです。それらの規制製品から、処方箋に書かれてある用法・用量に基づいてそれぞれの企業製品から錠剤やカプセルなどを取り出し、組み合わせているに過ぎないのです。ですからまさに、分包そのものなのです。したがって、かなりの時間がかかり、その間、処方箋を持参した患者はその調剤薬局内で待っていなければならないのです。

しかし、このような法改正でもっと問題なのは「 服薬期間中のフォローアップの義務化」なる表現なのです。この内容をどのように理解、解釈するのかが大きな問題だと思うのです。 服薬期間中のフォローアップの義務化とは 医薬品が投与された患者の病態と投薬の効果とを常時判断し、問題があればその患者の主治医に連絡することになるのです。でも、実際にそのようなことが出来るのでしょうか。
そのような 服薬期間中のフォローアップとは実際に患者を薬剤師自身が観察しなければ何もできないのです。患者が服用中に服作用かなと思われる変化が経験されても、調剤薬局にその旨を伝えることはかなり稀であり、多くの場合は処方医を訪問した時に伝えることが多いのです。もっとも、稀に調剤薬局に行ってそのような副作用関連のことを伝えることもあるのですが、そのような場合でも調剤薬剤師に出来ることは用量を下げるとか、処方医に伝えるとか、することは出来るのですが、そのような行為を以て調剤薬局のホロウアップの成果だと短絡的に理解している調剤薬剤師も存在するのです。

また、実際に服薬期間中の症状の経過は主治医、つまり医薬品を処方した医師がすることであって、処方箋に基づいて分包された処方薬を手渡した調剤薬剤師はそのような患者の 服薬期間中のフォローアップをどのようにしたら出来るのだろうか。殆どの場合、処方薬を服用中の患者は必要とあれば、処方医に行くのが普通であり、処方薬を投与した調剤薬局には行きませんし、ましてやその相手が薬剤師であればなおさらのことです。これが一般患者の常識でもあり、仮に調剤薬局に相談に行っても、副作用関連事象以外は、最終的に処方医に相談してくださいとなるのです。


でも、なぜ薬剤師会はこの「 服薬期間中のフォローアップの義務化」を取り上げたのでしょうか。
もし、実際にこのようなことが義務化され、実施されるとなると、調剤薬剤師の医療業務への直接の関与、介入であり、医師法に違反しないのでしょうか。このような義務化は医薬分業ではなく、「医療分業」、つまり患者の治療に際し、どのような薬剤がこの患者には必要なのかと言う判断が求められるのです。つまり実際に診療の現場で、患者への処方、投薬判断に際しては、治療医ではなく、薬剤師が直接関与することになるべきなのです。そんなことは不可能なのです。つまり、処方権の侵害にもなるのです。薬剤師には処方権はないのです。


でも、なぜこのような非常識、非合理的な業務を薬剤師の必須業務に加えたのでしょうか。その原因を究明すると、日本の医薬分業法の施行時の異常性にたどり着くのです。つまり、日本で正式に医薬分業が施行された時に、その時の薬剤師会長が、全ての薬局が処方箋薬をも同時に、しかも均一に取り扱うべきとの方針を打ち出したときに、今までの薬局、そのほとんどが薬屋的感覚で働いていた薬剤師会、そして薬局の薬剤師から総反対され、結果的には処方箋だけを取り扱う特別な「調剤薬局」の開設でお茶を濁しただけなのです。その当時、医薬分業が検討されたときの日本薬剤師会の会長は極めて例外的に元国立衛生試験所所長の刈米博士であったのです。つまり学者であり、従来の薬剤師会内環境とは全く違った分野の人だったので、そのように全国すべての薬局が病院からの処方箋を引き受けるべきであると宣言できたのです。

 

しかし、その後の経過を見ると門前薬局の開設ラッシュ、更に最近の門前薬局の病院、医院内への復帰傾向、最悪なのは調剤だけを店内で行うドラッグストアの拡大、など本来の医薬分業がとんでもない方向に進展してしまっているために、苦肉の策として医療の実際に入り込めることに着眼したものと解釈できるのです。


しかし、もしこのような対応に対して医師会がなんらの反応を示さないかと言うことです。医療の基本は患者の疾患を治すことであり、投薬と言うことはその過程での一つの役割でしかないのです。更に、その投薬に際し、実際にどのような薬剤を患者に投与すべきかは長年の医療の経験から医師が学ぶことであって、薬剤師はその時点では全く介入できないし、また介入できる知識、経験はほとんどないのです。もし、このような「 服薬期間中のフォローアップの義務化」が真剣に取り込まれるとするならば、薬剤師もそれぞれの診療科別の知識が必要となるのです。例えば、皮膚科専門の薬剤師、外科専門の薬剤師、などなど。しかも、医療、診察の現場で医師に対してこの患者にはどのような医薬品の組み合わせが最適な、のような助言を与えることが出来れば理想的なのです。しかし、そんなことは全く不可能なのです。しかも、処方権は医師にしかないのです。

もしこのような医師・薬剤師の共同処方が必要となるのであれば、薬剤師教育の中にもっと医療関連項目を設けるべきなのです。その一つとして、例えば、私の前からの持論である、すべての薬科大学に付属病院を併設すべきともなるのですが、そんなことは不可能なのです。
戦前からの薬学教育を眺めると、戦前は薬学部は結果的には有機化学が主要な科目だったのです。(いゃ、本当はそうせざるを得なかった環境だったのです) それが、戦後になって、少しづつ医療関連領域に移り変わりつつあり、その過程で日本独特の,しかも異常な形での医薬分業を始めてしまったのです。


欧州での医薬分業の歴史を熟知していれば、現在の日本の医薬分業は極めて異常な状態になっていることが理解できるのですが・・・・。
日本の都会では従来の感覚の薬局、つまり調剤をも含めたすべての医薬品を取り扱う薬局と言う姿は消えつつあり、ドラックストア全盛の時代になりつつあるのです。ですから、従来の薬局そのものを都会の繁華街で見つけることは不可能になりつつあるのです。ともかく至る所にドラッグストアがあるのです。もし、海外から多くの観光客が来て、薬局は何処にあるのですか、と聞かれたら一体どのような返事が出来るのでしょうか。

 

 

 

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