« 忖度は官僚からの「おもてなし」 | トップページ | 日本語は難しい(12) 語順による理解 »

2018年4月19日 (木)

日系人はなぜ南米だけなのか

日系人はなぜ南米だけなのか
   
法務省はブラジルやベル-などで暮らす日系四世の若者を日本で就労できるための新たな在留制度案を検討しているとのことですが、ここで疑問に思うのはなぜ南米からの日系人のみを対象にしているのかということです。

かって、日本のバブルの時期に労働力の確保のために南米からの日系人三世までを出稼ぎ労働者として呼び寄せ、その後の経緯は周知のように日本の経済状態の低下とともにそれら多くの出稼ぎ呼民はまた南米に逆戻りになっていました。

しかし、今回はまた労働人口の減少という社会事態に対応するために前回の南米からの日系人の呼び寄せという前回の蒸し返しパタ-ンが実施されようとしているのです。しかし、このような発想はあくまでも一時的な労働人口補足のための一時的な目的以外での何ものでもないのです。

このような発案の背景にあるのは全ての外国人を呼び寄せるより日本人の血を引いた日系人をとの概念がその根底にあるからなのです。つまり、日系人という概念に大きな意味があるのです。

それにしても、もしそのような血統を重視した日系人に限定するのなら、なぜ東南アジア、アメリカ、欧州などの日系人二世、三世などもその対象にしていないのでしょうか。その理由を考える前に理解しなくてはならないのは、現在の南米日系人は戦前、そして戦後間もなくの間接的な意味での”棄民政策”の一環として致し方かなく南米移民を政府が間接的に音頭を取って進めていたことを理解すべきなのです。

しかし、時代の経過とともに今度は再び日本での労働人口が減少しつつある今日の日本の社会状況を考慮して、再び南米日系人の出稼ぎ移民を、との心理的考察があるのですが、これほど南米移民日本人を軽視した発案はないのではないでしょうか。

つまり、南米日系人四世はいまだに経済的に貧しい状況下にあるので、こちらから声を掛ければ日本にまた出稼ぎに来るものとの暗黙の理解があるのです。そのことは裏を返せばアメリカや欧州にいる日系人二世、三世、四世などに日本に出稼ぎに来ませんかとはとても言えないからです。

その一方、東南アジアには主として戦後直後の混乱期に日本人男性と現地人女性との間に生まれた日系人二世、三世がかなり存在するのですが、戦後の混乱もあって、それらの日系二世や、三世は日本の国籍が与えられず、さらに家族的な問題もあって日系人としては取り扱われていないという社会的悲劇が介在するので、日本政府としてはそれら東南アジアに存在する潜在的な日系人の存在は全く考慮していないのです。おそらく今後もそのような対策は取らないでしょう。

それにしても、戦後まもなくにいろいろな事情から東南アジアに一時的に残ってそれらの国の独立に寄与した元日本人兵士がその後になってその地の女性と結婚して家族を持ったのですが、そのごにそのような残留元日本兵が故郷日本に帰国した時には当時は現地で結婚した現地の女性を一緒に日本には連れてこれなかったとのことです。一体どうしてなのでしょうか。現在になって、そのような元日本兵の家族が父親を捜しに日本に来たり、或いは連絡の取れた父親に会いに来たりした記事がときおり新聞に報道されていますが、これほど非人間的、非人情的な状況がどうして許されるのでしょうか。このような人たちは日本では日系人としては扱われていないのです。

日本では海外日系人協会と言う団体が毎年お祭り的な会合を東京で開いていますが、その主な対象者は南米の日系人が主体なのです。ですから、東南アジアでの日系人は全く対象としては考えていないのです。

今後もますます拍車がかかる日本国内での若年層人口の減少、高齢化社会の増大などともに日本での労働人口確保のためには根本的な移民政策が必要ではないだろうか。

なお、日本に居住している外国人の統計は以下のようになっています。

一般永住者 749,191 29.2
特別永住者 329,822 12.9
留学 311,505 12.2
技能実習 274,233 10.7
定住者 179,834 7.0
日本人の配偶者等 140,893 5.5
その他 576,370 22.5
合計 2,561,848 100

「永住者」(一般・特別の合計)の資格を持つ永住外国人は約107万人である。一般永住者の数は74万9,191人で、年々増加している。特別永住者の数は32万9,822人で、年々減少している(2017年12月末時点)。在日外国人の在留資格のうち、長期の在留期間を認められるものは、以下の3種がある。一般永住者:外国人のうち法務大臣が永住を許可した者(在留期間制限なし)
特別永住者:韓国籍・朝鮮籍・台湾国籍・その他の平和条約国籍離脱者とその子孫(在留期間制限なし)
定住者:法務大臣が在留を特別に許可した日系人とその家族(在留期間が1年か3年)。主に日系ブラジル人、日系フィリピン人、日系ペルー人等が対象[8]。

このように法的には日系フィリッピン人も日系人の対象になっています。

« 忖度は官僚からの「おもてなし」 | トップページ | 日本語は難しい(12) 語順による理解 »

国際問題」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 日系人はなぜ南米だけなのか:

« 忖度は官僚からの「おもてなし」 | トップページ | 日本語は難しい(12) 語順による理解 »