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2018年2月 4日 (日)

国籍法11条と戸籍法との関連性

国籍法11条と戸籍法との関連性

日本に住んでいる本来の日本人にとっては国籍法のような全く関係のない法律もあるのです。日本も法治国家であるので実にたくさんの法律が存在しますが、その中でも例外として本来の日本人にとっては全然関係のない法律があるのです。それは国籍法という法律なのです。勿論、日本人と外国人との関連に関しては国籍法も関与してきますが、外国人との関与が全くない本来の日本人に関しては国籍法は全く関係がない法律の典型例なのです。

日本の国籍法によると「自己の意志で外国籍を取得した場合には“自動的“に国籍を失う」と規定されているのです。(国籍法11条) もっとも、この条文には「自動的」という表現はありませんが、法務省のホムペイジには「自動的」という表現が使われています。

しかし、この国籍法の規定の周知度はゼロに近く(それは当然で、国籍法というものは日本に居住している日本人に関しては全く関係のない法律だからです)、また行政もそのような存在の広報などは100%していないのです。

ところが在外日本人が何らかの事情(職務上、行政上、国際性意識など)から「自らの意思」で滞在国の国籍を取得した時に起因する日本国籍喪失についての知識は殆どの在外日本人が認識していないのです。当然のことながら、日本の政治家、知識人などもその意味するところの理解は全く欠如しているのです。その典型例は、フジモリ元ベル大統領が日本に避難してきたときに当時の政府は、あっ、フジモリさんは日本にいまだ戸籍があるので、日本の旅券を出してもよいですよ、いとも簡単に対処していたのです。つまり、そのことに関与した日本の政治家は国籍法の知識は全くゼロだったのです。ところが、国籍法そのものの存在について、在外日本人が国籍喪失の事実を知らされたときに対する驚きに対して、そのようなことを表明すると在日日本人はそんなことは当然でしょ、ちゃんと国籍法に記載があではないですか、のような反論をいとも簡単にしているのですが、そのような人も国籍法そのものをその時点では全く読んだことなく、、全く理解していないのです。

そのような在外日本人がある日、自分が所持している日本の旅券の有効期限が切れたので、海外公館に出向いて旅券の更新を申請しようとした時に、通例の場合には、領事館はその人の該当国での滞在許可証の提示を求めるのですが、居住国での国籍を取得している時には当然ながらその国での滞在許可証は必要がなくなっており、したがって、その結果としてそのような滞在許可証は所持していなのです。

そうなると、領事館は国籍法11条に基づきもうあなたは日本の国籍を失っていますので、日本の旅券の更新はできませんと断られ、そこで初めて事の重大性を認識させられることが殆どなのです。それは当然で、在外日本人にとって、日本の旅券があることは日本人であることの唯一の証明書になるからです。考えてもて下さい、ある日突然に日本人であることが否定されてしまうことが如何に重大であるかということを。でも、このような経験は在日日本人には全く理解できないのです。

このように、在外日本人を含めて殆どすべての日本人は国籍法11条の存在、その意義などを全く認識していないからなのです。さらに最悪なのはこのような事態に直面する可能性のある日本人は海外に居住している日本人に限定されていることなのです。


更に問題なのは、国籍法に基づいて日本の国籍を失っても、その時点では日本の戸籍は厳存するので、日本で旅券の更新、再交付を考えれば再び旅券が手に入ると考えている人もかなりいるのですが、そうすることは厳密には戸籍法違反、そして旅券法違反になるのです。もっとも、日本で旅券の再交付をすれば旅券が手に入ると簡単に考えて、日本でのそのような該当者が一時的に旅券の交付を考慮しても、最近では日本での住民証が無いと旅券交付は困難、不可能になるのです。

なお、このような事務処理は全ての海外領事館が同じように対処しているかと言うと、それぞれの国の領事館員の裁量に任されている場合もあるのです。もっとも、厳密には十年位前まではそのような自由裁量処置をとっていた大使館員もいたのですが、最近ではそのようなことはほとんどなくなりました。


ここで多くのそのような該当者が考えるのは、戸籍がいまだ残っているので、自分は日本人であり、当然のことながら旅券を交付して貰えないのはおかしいと考えるのです。しかし、このことに関連して、以下のような類似例があるのです。

それはある人が死亡した時には当然ながら戸籍法第86条により、 死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡があつたときは、その事実を知った日から3箇月以内)に、この届をしなければならないとなっているのですが、もし、関係者がそのような死亡届を提出しなければ当然その死亡者の戸籍は存在するのです。でも、だからといってその人がいまだ生存しているとは誰も考えません。つまり戸籍がいまだ残っているが、生存している(国籍法の該当者の場合にはいまだ日本人である)ことにはならないのです。これは当然のことなのです。

戸籍法によるとその第132条には、「戸籍の記載又は記録を要しない事項について虚偽の届出をした者は、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する」。また、第135条には「正当な理由がなくて期間内にすべき届出又は申請をしない者は、5万円以下の過料に処する」となっているのです。でも、罰金を払えば戸籍は存続するかと言うと、死亡の場合には実際には死亡届を遺族自身が記入提出するケースは少なく葬儀業者に依頼する場合がほとんどであるようで、これがなされていない場合には火葬許可証が下りないのが現実なのです。

一方、国籍喪失者が自ら戸籍法に基づいた国籍喪失届を提出すことになっているのですが、ここで疑問になるのは国籍法11条該当者の場合にはその時点でもう国籍を失っている(法務省の見解)ので、国籍喪失届を出す対象者にはもうなっていないと理解できるのです。つまり、その時点で該当者はもう日本人ではなく、外国人になっているので、外国人に対して日本の国籍喪失届を出しなさいということには不合理性が存在するのですが、このことに関しては誰も異議を挿まないのです。

むしろその逆で、海外公館(外務省の出先機関)は「本人の志望により外国国籍を取得した場合、取得をした時点で日本国籍は失われるため、国籍喪失届を提出し戸籍に反映する必要があります」と広報していることなのです。これは明らかに領事館の誤解、曲解なのですが、もっとも、法務省のホムペイジにも明確に国籍喪失届の提出も記載されていますがね具体的にどのようにするかはめいりょうにしていません。。

死亡の場合の届け出は近親者が出すことが求められ、国籍喪失の場合には該当者自身がその届を出すことが海外公館による広報されているのですが、このような対応は間違っているのです。

海外公館がとるべき正しいやり方は、国籍喪失者の場合には領事館がその事実を該当者の外国籍から確認し、その事実を該当者の市町村に届けることにより、戸籍が無くなるのですが、このような正しい対処をしている海外領事館は全くゼロなのです。

いずれにしても、在外日本人が無意識に自身の目的の結果として、外国籍を取得するとその時点で「自動的」に日本人ではなくなることを認識している日本人は殆ど皆無なので、外国籍を取得する前に熟慮することが必要なのです。しかし、日本人が海外に出かけるときに手にする旅券にはそのような注意事項は全く記載されていません。つまり、国籍法11条の周知度はゼロに近いのです。
このことを訂正するためには国籍法11条を改正するしか方法がないのです。


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