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2018年2月15日 (木)

国籍法11条の解釈

国籍法11条の解釈

 

現在の国籍法11条の二項には「日本国民は自己の志望によって外国の国籍を取得した時は日本の国籍を失う」と表記されといるが、その後の対処に関してはなにも記載がないので、この条文の実施実務として考えられる手順は以下のようにいろいろと解釈することが出来るのです。

 

➀ 私が最初に考えたように、この条項は該当者は「自動的に外国籍を取得した時点で日本の国籍を失う」ので、その時点でもう日本人ではなく、外国人になっているので、国籍喪失届を外国人に対して提出してくださいとは言えない、と解釈できるのです。従って海外領事館はこの条文の履行に際しては、該当者の外国籍取得事実を確認し、記録に残し、そのデダを領事館自らが行政行為の一環として該当者の市町村に送付することにより、該当者の戸籍が消滅、つまり除籍、され、11条該当事項が完成する。

 

  問題点  該当市町村は海外領事館からの書類を以て、戸籍法に基づいて該当者の戸籍を消滅することになるが、このような領事館からの一連の業務は戸籍法には記載がない。つまり、戸籍法では戸籍喪失の手続きは国籍喪失届と言う書類が必要になるのではないだろうか。
   海外領事館が該当者の戸籍を実際に知る必要があるかどうかは、理論的には該当者の旅券発行時の書類には戸籍も明記されている筈なのです、ですから該当者に戸籍の記述を求めなくとも理論的には確認できるのだが、海外領事館は該当者に対して戸籍のデタも必要なので、国籍喪失届を出すことを求めている。
ところが、東京法務局の回答によると11条該当者は既に外国人であるので海外に居住する11条該当者には国籍喪失届の提出は求められないとも理解できるのです。

 

東京法務局でございます。
 お問い合わせいただいた件について回答させていただきます。
 鈴木様の御意見・お考えについては,お聞かせいただきましたが,当局は,鈴木様の御意見・お考えについて,それが正しいとか間違いとかいうことをお答えはしておりません。当局が御返答できるのは,行政庁としての当局が行っている事務の内容や法的手続になります。
 なお,日本国籍を喪失した者は既に外国人ですが,国籍喪失者本人が国内に居住する場合は,国籍喪失の届出義務があります。
 (連 絡 先)
 東京法務局民事行政部戸籍課
 〒102-8225 東京都千代田区九段南1丁目1番15号 九段第2合同庁舎8階
 TEL03-5213-1344  担当 斉藤 (平日9:00~17:45)

② まず、この条文が海外領事館で説明されるときには条文に無い「自動的に」という表現がしばしば使われているのです。つまり、自らの意思で外国籍を取得した時には自動的に日本の国籍を失うと解釈されているのです。このような説明で考えられるのは、もし外国籍を自分の意思で取得した時にはその時点で自動的に日本の国籍が無くなるものと考えるのが普通だと思うのですが、実はこのような解釈は海外領事館の見解によると間違いなのです。

 

どういうことかと言いますと、「国籍を失う」ということは「国籍を喪失する」と言うことではないのです。つまり「失う」と「喪失」とでは意味が異なり、また当然のことながら解釈も異なるということなのです。このような解釈は以下のようにドイツにある日本大使館の説明によっても明確にされているのです。

 

「鈴木様
 「国籍喪失届」は、「帰化」により日本国籍を喪失した人の最後の身分事項変更の届出と言えます。
 すでにドイツ国籍を所持し日本の国籍を喪失したと言っても、届出がなされ、それにより、戸籍に帰化により「除籍」と反映されないかぎり、「喪失」とは言えません。
  領事部 中嶋」

上記の領事館の説明によれば、そのような該当者は日本の国籍を“失っている“が、その事実を戸籍に反映させない限り、日本の国籍を“喪失している“ことにはならないのです。たしかに、戸籍が消されていなければその該当者はいまだ日本の国籍を喪失していないことになるということなのです。しかし、この理論には現実性がなく、戸籍がいまだ存在するから、「国籍喪失」にはならないという概念には一貫性が無いのです。例えば、ある人が死亡しても、その関係者が死亡届を出さなければ該当者の戸籍は存在するのですが、だからと言って、その該当者が生存していることにはならないのです。となると上記のような領事館の説明には妥当性が無いものとも解釈されるからです。

 

もっとも、このような解釈は、ある意味では一般的な法律、例えば、刑法の解釈にも当てはまるのかもしれません。つまり、殺人した場合には刑法により死刑になるが、殺人を犯した時点で自動的に死刑になることはないのです。つまり、その殺人と言う行為を証明することにより、殺人罪が成立し、死刑とするのであるとの理論に共通性があることになります。ですから、殺人を犯した時点で、自動的に殺人罪が成立するわけではないとの論理が
国籍法11条の場合にも当てはまることになります。

 

更に現実の問題として潜在的に大きく存在するのは、この海外の11条該当者が外国籍を取得したのだから日本の旅券はもう必要ないとして、日本の旅券をどこかにしまって、旅券の有効期間が切れてもその更新に領事館に出かけなければ、公式にはその該当者が日本の国籍を喪失しているという事実は表面化されず、従って該当者の戸籍は存在するのです。このような事例は意外と多いのですが、このような例では理論的には国籍法11条が死文化されていることにもなるのです。

 

なお、このような解釈は外務省も同じで、以下のような解説となっています。

 

投稿者 様
このたびは,外務省ホームページを御利用いただき,ありがとうございます。
御照会の件について,回答いたします。

政府において,日本国籍にかかる取扱いは,国籍法の定めるところによりなされており,国籍法の解釈をめぐり,同法を所管している法務省と外務省の見解に違いはありません。
自己の志望により外国の国籍を取得した方は,国籍法第11条に基づき日本国籍を喪失します。このような方については,戸籍を除籍する必要が生ずるため,戸籍法第103条第1項により,御本人,配偶者又は四親等内の親族が市区町村長に国籍喪失の届出をする必要があります。なお,戸籍法第40条により,その方が外国に在るときは,その国に駐在する日本の大使,公使又は領事に届け出ることができます。
戸籍法は外国に在る外国人には適用がないとされておりますが,この届出がされれば,御本人の戸籍に国籍喪失事項が記載され,国籍を喪失したことの証明(公証)となり,御本人が市区町村長に対して求めれば,国籍を喪失した事実が記載された戸籍謄本等の発給が受けられるようになります。我が国において,国籍喪失事項が公的に記載されるのは戸籍のみであり,ご自身の身分を安定させるためにも国籍喪失の届出は重要なものであることから,外国に在る日本国籍を喪失した方からの届出でも受理することができるとされています。
そこで,在外公館では,外国国籍をお持ちであることを認知した場合,それに気づいた時点で外国国籍取得の経緯をお伺いし,自己の志望によって外国国籍を取得したと考えられるときは国籍喪失届の案内を,自己の志望によって外国国籍を取得したものではないと考えられるときは,国籍選択の案内をしております。こうした御案内は,事務手続として該当する方々に等しく行っています。
なお,戸籍法では,戸籍の記載は届出に基づき行うことを原則とし(戸籍法第15条),身分変動等のあった者や一定の関係者に届出義務を課すことで戸籍の真実性を担保しようとしています。また,公的機関等から市区町村に対し通知をする際にも,その身分変動が生じた公的書面を添付しなければなりませんが,外国国籍を取得した際の帰化証明書や国籍取得証明書はその本人が所持しているものであることから,まず一次的には御本人等から届出を行っていただくことになるものと考えます。
 以上につきまして,御理解いただければ幸甚です。
平成30年2月 外務省領事局領事サービス室 戸籍国籍班 電話(03)3580-3311(内線3186)

③ 一方、法律を管理している日本の法務局の解釈は上記のような海外領事館の対応とは全く異なった解釈を示しているのです。

メールを拝見いたしました。
 日本の国籍法第11条第1項は,「日本国民は,自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは,日本の国籍を失う。」と定めています。すなわち,自己の意思により外国の国籍を取得した日本国民(典型例としては,外国に帰化した方)は,当該外国国籍取得の事実をもって直ちに日本国籍を喪失することになります。
 したがって,在スイス日本国大使館の説明は,正当なものであると考えます。
 なお,国籍喪失届は,既に発生した国籍喪失の事実を戸籍に反映させるという報告的な目的のための届出であり,当該届出が受理されること又は戸籍に記載されることをもって,国籍喪失の効果が発生するという性質のものではありません。
法務省民事局民事第一課         
担当 国籍第一係 本山     
TEL.03(3580)4111(内2451)


この法務省の解釈では国籍喪失届そのものはたんなる事務的なものであって、国籍法そのものが決定的な国籍喪失の要因、条件であり、戸籍そのものの存在は二次的なものでると解釈できます。このことは戸籍が残っていようがいまいが、それはあくまでも二次的なもので、重要なのは国籍法11条該当者であることがその事実を持って国籍を失うことになると解釈できるのです。この概念は私が、最初に考えたように①に述べたようになるのではないかと理解するのです。

 

ただ、この法務省の解釈でも私が考えている11条該当者はその時点で外国人になっているとのことにたいしては肯定的な意見と解釈できるのですが、国籍喪失届の提出については外務省が説明しているとおりであるとの見解なのです。つまり、両者の間には一貫性がないものと理解できるのです。この法務省の解釈を演繹します。②に言及しましたような潜在的な国籍喪失者も、国籍喪失届の提出がなく、戸籍も存在していても既に国籍を失っていることになる訳です。ちなみに、例のペル大統領だったフジモリ氏は国籍法11条該当者であったにも係わらず、戸籍があることを理由に日本政府が日本の旅券を交付していたこと自体が、国籍法、戸籍法違反なのですが、あの当時は、首相をはじめとして誰も国籍法とか戸籍法についての言及はなかったのです。いゃ、言及がなかったというよりは、誰もその存在を知らなかったということが出来るのです。

 

以上三点の問題点に関連して言えることは外務省と法務省との見解について、国籍喪失届の提出を該当者に求めることは間違いないとされているのですが、東京法務局の見解とは異なるのです。

なお、基本的な問題として「自己の志望」という表現なのです。もし、自己の志望ではなく、外国籍を取らざるを得ない環境下で、外国籍を取得した場合には、「自己の志望」には該当しないので、たとえ外国籍を取得しても日本の旅券は更新されるべきと判断できるのですが、殆どの領事館の対応はそのような説明、解釈は一切せずに外国籍をも持っている人に対して日本の旅券の更新を拒絶しているのが現状なのです。これは明から11条の曲解であり、またこの条文を正しく理解していないことにもなるのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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