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2016年6月の記事

2016年6月19日 (日)

裁判化学から『法薬学』へ

裁判化学から『法薬学』へ

 

私が学生のころは薬学教科の中に裁判化学という教科あり、個人的には極めて興味のある授業でした。ところが、最近気が付いたのですが、現在の薬学教育にはこの裁判化学なる教科が消えてしまっているのです。でもなぜなのでしょうか。

戦前の薬学教育はどちらかというと有機化学を主体としたものであり、医療関係者としての薬学教育はあまり強くはなく、その結果、医療担当者としての認識は薄く、単科大学の役割は薬局で働く薬剤師としての資格者養成意識がきわめて強かったのです。しかし、その後、戦後になってから、医薬分業が積極的に推し進められ、さらに2006年には薬学教育六年制が施行され、その翌年には医療法改正に伴い、従来の「調剤をする薬局」が医療提供施設に認識されるなど、医療関連部分が強調されるようになった結果、従来の化学重視の薬学が医療重視の薬学に転身するようになり、いつの間にか裁判化学なる教科は淘汰されてしまっているようです。

つまり、薬学教育6年制の導入により、臨床薬剤師養成に向けた医療人教育の重要性が叫ばれるようになった結果、化学の名の付いた裁判化学はいつのまにか忘却の彼方に追いやられてしまっているようです。

本来、薬学教育六年制が制定された当時は従来の薬学教育がさらに二年間延長されることによってどのような方法で教科の拡大を図るかとの懸念があったのですが、薬局実習などの拡大などでなんとか六年過程が行えるようになっているのが現状なのです。本来ならばその際には裁判化学、衛生化学、公衆衛生学、疫学など二年延長学習に取り入れられるよい機会があったのですが、残念ながら無視されてしまっているのです。もっとも、大学によっては衛生薬学のような科目の中にこれらの分野がすこし加味されているようです。

つまり、薬剤師の職域範囲を拡大するという意図は姿を消し、むしろその逆に薬剤師の職域を自ら狭めている傾向が強いのです。例えば、調剤専門の薬局の拡大、OTC薬の自由販売化、インタネット販売の拡大、などなど本来の「薬局はすべての医薬品を取り扱う」べきとの基本が軽視、ないし無視されているのです。いずれにしても、調剤しか行わない薬局などの存在など日本の医薬分業は支離滅裂なのです。

折しも現在、薬剤師国家試験対策に偏重した薬学教育カリキュラムが問題視されるなど、6年制薬学教育の様々な課題が指摘されているのですが、薬剤師の職域拡大という観点からも上述のような無視されてしまっている教科を取り入れる良い機会だとも考えられるのですが、そのような考えを検討するような気配はありません。

最近の議論として薬学教育の見直しがありますが、医薬学教育制度が六年制に移行してからは薬剤師の医療関係者としての役割が極度に重要視され、その底辺領域としての衛生技術関連、法薬学領域、検疫業務領域などの職域に関し た教育項目か軽視ないし無視されている傾向がみられるのは残念なことです。

この裁判化学という分野はある意味ではきわめて大切な分野であり、法医学、つまり犯罪などの鑑識分野にとっては重要な分野なのです。法医学は医学部教育の一端を担っているものであり、似たような領域には法歯学(forensic dentistry, forensic odontology)という分野もあるのです。この法歯学は犯罪捜査や裁判などの法の適用過程で必要とされる歯学領域の事項を研究、応用する学問であり、歯科法医学、法歯科医学などとも呼ばれています。

しかし、なぜか法薬学(forensic pharmacy)という分野は存在しないのです。一般的にはいろいろな分野で「医歯薬」という表現があるように、法医学、法歯学があるので、法薬学があっても不思議ではないのですが、なぜかそのような発想は誰も持っていません。しかし、現実には警察の鑑識課には薬剤師の技官も多く活躍しているのです。つまり、法科学(forensic science)という部分を補充、拡大するという見地からも「法薬学」の導入が望まれるのです。

十年以上まえになりますが、坂井活子著「血痕は語る」が出版されていました。この本を読むと如何に裁判化学が重要な役割を果たすことが出来るのかということを伝えています。しかし、現在の薬学生はそのような分野があり、職業としても極めて重要な部分を占めていることに対する理解は殆どないのではないでしょうか。

その他にもテレビでおなじみの沢口靖子の「科捜研の女」では法薬学が重要な役割をしていねのです。
もっとも、法医学関連の本には探偵小説並みの非常に奥の深い実話が載っていますので、探偵ものに関心がある人には有益な本なのです。最近には「死体鑑定医の告白」(上野正彦)というのがあります。

いずれにしても薬学教育にはいろいろな分野の人を養成するという「薬剤師の職域底辺の拡大」という見地から、薬学教科に「法薬学」の導入を推し進めたいものです。

なお、最近判ったのですが、獣医学の領域でも「法獣医学」という概念があることです。つまり、動物への虐待などを解明する役割があるようで、アメリカではこの分野の実績があるようです。

追記 (2019 July)

最近のテレビ番組にフジテレビの「監察医朝顔」、そして朝日テレビの「サイン」など法医学関連の番組が立て続けに放映されていました。このような番組がテレビではかなりの視聴率を上げているようです。しかし、本ブログに書いたような法薬学なんて言う概念は全く生まれてこないのは残念なことです。

 

追記 (2021.June)

最近の報道によると解剖医の絶対数が足らないので、解剖医養成の必要性が指摘されています。

しかし、それと並行して、やはり裁判化学を専攻した薬剤師の養成も必要なのですが、現在の薬学教育の中にはなぜかそのような必要性のある教科がみられないのです。

 

<追記 )2021 Nov)
最近の報道によると、長寿ドラマ「科捜研の女」(テレビ朝日系・東映)は、1999年にシーズン1の放送が始まり、以来23年間でシーズン21を数える。京都府警科学捜査研究所(通称・科捜研)の法医研究員・榊マリコを中心とした研究員たちが科学的見地から難事件に挑むミステリー。シリーズ通しての平均視聴率は12%を超える、ありました。
このような社会的にも意義のある放送がなされているのですが、薬学関係者にはそのような関心はゼロのようです。まことに残念なことです。

追記(2022 July)

昔の新聞に載っていたのですが、福岡県警の検視官の松島茂さんが書かれた本があります。それは「検視のバイブル」と言うものなのです。

でも、このような分野には薬剤師が関与できる分野なのですが、現在の薬学教育にはこのような分野、私の主張では「法薬学」、なんて誰も関心がないのです。ドラッグストアの調剤室勤務なんて、といも考えられない職場が氾濫していのです。

 

2016年6月 6日 (月)

朝鮮の歴史的、地理的立場を正しく理解する

朝鮮の歴史的、地理的立場を正しく理解する

朝鮮の歴史的、地勢的背景を熟知していないと、現在の韓国、北朝鮮の問題を正しく理解できないと思われます。最近の韓国の外交で、韓国が中国寄りになったり、アメリカ寄りになったりと右往左往していることが日本の識者とかマスコミから軽蔑感で論じられています。

確かに現在の韓国の外交政策を見ていると自国の都合のよい方向にいつでも臨機応変的に変えているので、外から見るとまさに身勝手な振る舞いとしか思われないのです。

一般的に、なにごとにも原因と結果あるのですが、ほとんどの人、政治家、マスコミなどは結果だけから物事を判断してしまうのが一般的なのです。これはある意味では致し方がないのかもしれません。その身近で、端的な例は刑罰があります。盗んだ、殺したなどはある事実の結果なのですが、司法社会では結果が重要視され、その原因は二の次、三の次なのです。確かに、司法の場では裁判という場所で原因がある程度考慮されて、判決に影響を与えることはありますが、相対的には結果がきわめて重要なのですが、そのような原因の詮索究明はほとんど軽視されています。

同じように国際間の争い、つまり戦争、は結果のみが重要視され、なぜそのような結果になったのか、なぜそのような状況に引き込まれたのかとの究明は刑法の場合よりも国際的にはほとんど無視されているのが一般なのです。つまり、戦争になった原因はあまり究明されず、また多くのひとは知らされてはいませんし、また一般的には知ろうともしません。

その結果。結果論だけで判断され、日清戦争、日露戦争などは攻め込んだ日本が悪いとなるのです。太平洋戦争もアメリカ、英国、オランダなどの日本包囲網の結果なのですが、もそもその原因は問題視されず、結果的には真珠湾攻撃で日本がすべての罪になって居るのです。

このような短絡的な思考を正しく理解させてくれる本が最近出版されました。それは石平氏の最新著『韓民族こそ歴史の加害者である』で、そこにはまさにそのような歴史的経緯が詳細に述べられているので、新鮮な話になるのかもしれません。

このような内情を知らない我々は、ここでも原因はあまり問題視されず、結果としての日清、日露戦争という結果のみが取り上げられて理解しているのではないでしょう。また多くの歴史家もそのような結果論的な視野にたって理解、解説している人が多いのではないでしょうか。つまり、日清戦争や日露戦争は日本が仕掛けた侵略戦争だ、となるのです。

しかし、歴史的事件などでは歴史的な原因論的な理解がないと、朝鮮人が行動していることに対して、多くの日本人は驚きを以て対朝鮮理解を持つのですが、彼らの本質を熟慮していれば別に驚くことではなく、冷静に対処できるのです。現在のように韓国と日本とでの間ではいろいろな問題が介在しますが、冷静に考えれば、いずれも韓国から引き起こされている問題なのです。勿論、すべての場合で韓国が悪いということではないのですが、日本人と朝鮮人とでは考え方がきわめて大きく異なること自体への理解が日本人には必要なのです。

そのような意味でも『韓民族こそ歴史の加害者である』はまさに多くの日本人がほとんど理解していない朝鮮人の考え方、外交などを知る推薦の本かもしれません。
もっとも、別な視点から朝鮮半島を考察すると、朝鮮は歴史的にもねまた地勢的にも不安定な環境にある、いゃ、そのような環境は避けてらないのかも知れましれません。つまり朝鮮半島は中国、ロシア、そして日本という国々に囲まれており、臨機応変的な外交政策を実施しないと生きていけない宿命にあるのかもしれません。ですから、最近の韓国のように、中国寄りになっているかと思うと、アメリカに媚を売ったりしていること自体が、朝鮮の地理的、歴史的運命と理解すれば、何も現在の韓国の外交政策に日本が苛立ったりする必要はなく、傍観せざるを得ないのかもしれません。

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