医薬分業と薬局の存在意義
医薬分業と薬局の存在意義
来る三月十二日に規制改革会議が医薬分業に関した公開討論の開催をすることになっています。
でもなぜ今頃になって医薬分業についての議論が必要になったのでしょうか。いゃ、ここで注意しなければならないのはそのような議論が必要になってきている背景、現状を十分に理解することが重要なのです。
ここで改めてこの会議でなぜ今になって医薬分業が話題になっているのかを理解すると現時点では次の二点に要約されるのではないでしょうか。
1) 患者の利便性
2) 調剤技術料に基ずく医療費の高騰
最初の患者の利便性とは主として患者の調剤薬局での待ち時間が長いことに要約されるのです。平均すると三十分前後の待ち時間があるようで、最悪の場合には一時間近くも待たされる事があるのです。これでは患者にとっては病院、医院からわざわざ別のところにある調剤薬局をわ探してそこに行くなんらの利便性もありません。でもどうしてそのような待ち時間が必要なのかを検討する必要があるのですが、今までにこの点に焦点をあてた議論は一切なされていないのです。
一方、調剤に関しては実際の医薬品費用以外にも薬暦管理指導料が410円、など実際の薬価以外にいろいろな名目での付加費用が計上されているのです。でも本当にそのような付帯業務にたいして対価を考慮しなければならないのでしょうか。
これらの問題を理解するためには以下のような歴史的背景情報ならびに現状を理解しなければなりません。
1) 医薬分業施行時の対応の欠陥
(とりあえず便宜的な門前調剤薬局の発足・本来。これは便宜的なものであったはずなのだか、なんらの改革もなされず今日に至っている。)
2) 調剤だけしかしない門前調剤薬局、並びに調剤を全く引き受けない薬局の共存 (あってはならないこと)
3) とりあえず分業の形をとるために従来の院内処方業務そのものを機械的に外部に出した為、処方調剤が院内でのバラ処方をそのまま踏襲し、箱包装処方が考慮されず、その結果、患者の利便性(特に待ち時間)が著しく阻害される結果となっている (非処方箋薬は箱投与、処方箋薬はバラ投与との矛盾)
4) 調剤専門の門前薬局の開局時間の超優雅性
5) 本来、非処方薬をも含むすべての医薬品を取り扱うべき薬局の一部業務(非処方薬の投与)がドラッグストア、インタネット販売などに積極的に取り入れられるようになっている。(その結果、将来は非処方薬は薬局で手に入れるものとの概念が失われることになる)
6) 調剤業務は本来は薬局内部業務の一部のものにも係わらず、コンビニ、ドラックストアなどにそれらの業務が取り入れられ始めている
7) 二十四時間対応の薬局、調剤薬局が皆無
8) 薬局の収入は本来は医薬品の販売による薬価差に基ずくべきであり、技術料金などに依存するのは医療機関としての薬局の退廃化(調剤業務関連費用の弊害)
9) 薬局と医薬品卸との密接な協調性がほとんどない(薬局の在庫状況を数時間以内で解決する全国的なシステムの欠如)
つまり、このような状況から判断すると日本での医薬分業はその本来の趣旨から大きく外れ、支離滅裂状態にあり、その結果として今回の規制改革会議の公開討論の開催となったものと理解すべきではないだろうか。
ここで改めて認識しなければならないのは、薬局は処方薬、非処方薬(大衆薬)を含めて全ての医薬品を一括して患者に提供すべき役割を担っているとの認識が必要であり、また医療機関の一員でもあるとの高尚な理念を維持すべきである。
医薬分業の発祥地である欧州の薬局の現状を知れば、日本の医薬分業が以下に変態であり、また非効率的であることが分かるのです。
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