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2013年9月の記事

2013年9月25日 (水)

骨折は副作用扱いか ?

高齢者が高血圧治療を受けたときにその治療初期に転倒して骨折を引き起こすことはよく知られています。最近の論文にもそのような例が報告されています。
{The risk of hip fracture after initating antihypertensive drugs in the elderly}
American Society for Bone and Mineral Research 2012, 1055

このような症例に似たことは高齢者への睡眠薬投与にも見られます。

ここで、基本的な考えに、この骨折を薬剤投与による副作用とするのか、それとも副作用の結果outcomeにするのかということです。勿論、そのような抗高血圧剤投与の場合に「ふらふら感」、「血圧低下」、等が副作用となり、骨折そのものは副作用の結果になるのですが、まず骨折自体は医療関係者の薬剤の安全性という観点からの関心の対象になりにくいことがあるのです。

と言いますのは入院患者以外ではそのような副作用、そして骨折は家庭などで起こることが多く、骨折した時点で、入院となるのが普通であり、そのような場合の医療関係者のほとんどはその骨折の原因はほとんど考慮せず、また関心もなく、現実の骨折だけに関心が集中するので、その骨折を副作用として行政に報告するようなことは極めてまれなのです。いゃ、むしろ皆無なのです。

つまり、睡眠薬とか抗高血圧剤投与に起因する骨折は副作用症例としては報告されてこないのが普通なのです。換言すれば、そのような薬剤による「副作用」および「副作用の結果」は日の目を見ない、まさに「氷山の一角現象」の典型例なのです。

そんなことは常識であり、骨折などをいちいち薬剤の副作用に関連があるのでは?と考える医療関係者は残念ながらほとんどいないのです。また、睡眠薬とか抗高血圧剤の添付文書にも「骨折」などは載っていないのが普通です。でも、考えてみればこのような骨折はかなりの重症の場合もあり得るのですが・・・・。


2013年9月22日 (日)

国際感覚のない日本の新聞

国際感覚のない日本の新聞

  日本に居る新聞の読者には全く関係ないのですが、海外にも日本の新聞の定期読者が居るのをご存知だろうか。

  日本の主要新聞には通称「国際版」と名打った新聞が海外在住日本人購読者に毎日配布されているのです。この新聞には日本の新聞と全く同様にその日のテレビ番組表が一面を占領しています。
  日本では全く問題がなくとも、海外版が現地の読者に配布される時点では多くの場合、この一面全部を使ったテレビ、ラジオ番組表は無用の長物になってしまうのです。海外で、日本の新聞の国際版はどんなに早くともその日の午後以降の配達となるのです。しかも、毎日自宅配達されるのは一部の国、たとえば英国、だけであって、多くの欧州各国では翌日配達の郵送になるのです。したがって、その時点ではそれらの新聞のテレビ番組欄は全く役に立たないのです。

  例えば、私が住んでいるスイスは英国で印刷された国際版が郵送され、スイス国内で発送されますので、一日遅れ、あるいは二日遅れで新聞を手にするのですが、その時点ではテレビ番組表は全くのくず紙同然になるのです。しかし、そんなことには全くお構いなく各新聞社は国際版にも日本と同じ感覚でテレビ番組が印刷されているのです。

  海外でも日本のいろいろなテレビ番組をオンタイムと聴視することが出来るので、そのような場合には日本のテレビ番組が手元にあれば便利なのですが、すくなくとも毎日配達されてくる海外版新聞に印刷されてあるテレビ番組表は全く使い物にならず、そのまま捨てられてしまうのです。

海外での日本の日刊紙は日本の定価の五倍もする値段なのです。それだけの高価な新聞を手にしても全く役に立たない番組表などはまさにムダ金なのですが、その辺への考慮は日本の新聞社には全くないのです。

  似たような意味で全く役に立たない紙面に日本の旅行会社の海外旅行の宣伝があります。海外に居住している日本人にはそのような海外旅行の宣伝広告欄は全く役に立たないのですが、そのような無駄な紙面も高価な新聞代の一部になっているのです。そのような視点から日本の新聞の国際版を判断すると、高いお金を払って紙くずを購入していることにもなるのですが、海外からのそのような指摘はないのかもしれません。

  もし、日本の新聞社が本当に海外読者のためを思うのなら、せめてテレビ番組は翌日のものを海外版に印刷すべきであり、また、旅行会社の宣伝欄を廃止して、例えば夕刊の一部の記事を転載するなどの読者のためのサービスをしてほしいものです。 

2013年9月 2日 (月)

副作用発現の対称性に関する考察

「副作用発現の対称性に関する考察」

周知のように副作用が両側性の臓器に発生するときは必ず両側性の臓器にほぼ同じように現れるというのが薬理学的な理解なのですが、このような点に関する報告、論説は意外と見かけません。もっとも、そのような両側性の臓器、器官ので副作用発現の対称性は当然のことなので、あえて調査、研究の対象になっていないのかもしれません。たとえば厚労省の薬剤性間質肺炎対応マニュアルにもこの両側性のことに関しては全然触れていません。ただそこに記載されてある症例の記述を観ると両側性での障害がうかがわれます。さらに問題なのは日本語表現では「肺」は肺であり、肺障害が単数か複数かの判断が不可能なのが問題なのです。つまり、日本語での臨床論文では両側性の臓器の表現に単数、複数の明確性が欠けているので、その判断に困るのです。そのようなあいまいな日本語臨床論文を外国語に訳すときは訳者はどのように該当臓器などの単数、複数の判断をしているのでしょうか。 
 
一般的に化学物質が人間の両側性臓器機能、たとえば腎臓、肺臓、眼、聴覚など、に害作用を及ぼすときには必ず両側性にその影響が出ると理解することが出来ます。多くの化合物は血中のアルブミンや血球への親和性より、臓器の蛋白結合が高い場合があるので、アルブミンから離れて臓器に蓄積するといわれています。したがって、両側にある臓器、器官にはそれらの影響は均等に及ぼします。臨床で片側しか発症しない疾患は血管閉塞とか感染などで蛋白結合に無関係な場合だけと考えられます。もし、毒性試験などで両側性臓器、器官の片側しか病態が出ないようなことが複数の動物でみられるとしたら、薬物の特殊な薬効によるものと考え、その薬物による副作用とは考えるべきではないのかもしれません。

したがって、ある薬剤の副作用と考えられる障害が、両側性臓器・器官に非対称性に発現している場合には逆にその害作用はその薬剤の副作用ではないと考えることが出来るのです。もっとも、報告されてきた薬剤の害作用が非対称性に発現していたとしてもその報告の時点では非対称性であったが、数日後には対称性に発現しているかもしれない。つまり、ある臨床報告で薬剤起因と考えられる害作用の非対象性が記述されていてもその時点では両側性ではないから、多分、薬剤起因の害作用ではないと早急に判断しては間違いになる可能性が高く、従ってそのような症例のその後の経過観察が必要になるものと理解すべきです。この点に注意すべきは副作用報告がある時点でのみの観察であることが多いので、もし両側性の臓器、器官に発生し、その時点でその影響が片側の場合には少なくともその時点からの数日間の観察、追跡調査が必要になることになります。


いずれにしても、薬剤による有害反応は対称性臓器・機能に対しては両側性に発現すると理解するのが常識的な判断となります。このような観点から実際にいろいろな薬剤の副作用症例を検索してみるとほとんどの場合、両側性に発現していることがわかります。

例1) 薬剤性パーキンソニズム
パーキンソニズムは多くの薬剤の副作用として起こり、服用後数日から数週間で発症することが多い。またパーキンソン病と異なり左右対称性に症状が発現するのが普通である。女性・高齢者で起こりやすく、同じ薬剤なら服用量が多いほど起きやすい。
また、特発性パーキンソン病と薬剤性パーキンソニズムの違いというと、以下のことが上げられる。薬剤性パーキンソン病は
1. 進行がはやい
2. 突進現象が少ない
3. 左右差は少なく、対称性の事が多い
4. 姿勢時・動作時振戦が出現しやすい

例2) 薬剤起因の聴覚副作用、例えば、難聴は一般的に両側性、対称性、高音障害型~水平で
  、耳鳴を伴う。

例3) 難治性骨髄腫患者へのサリドマイド単剤投与時における副作用としての感覚神経障害は
   対称性。 一般的に. 一日投与量が 200mg を超えると投与量に応じて副作用発現頻度が高くなる傾向がある。
例4)  医薬品の副作用として皮膚障害が発現することは,よく知られている。例えば、SJSの初期症状は,発熱,左右対称的に関節背面を中心に紅斑(target lesion等)が出現し,急速に紅斑の数を増し,重症化するにつれ,水疱,糜爛を生じ,融合する。
例5)  パキシルの副作用、特にセロトニン作用薬と併用した際に発現する可能性が高い悪性症候群, 無動緘黙以外では, 手の甲・足の甲・肘・膝などの四肢伸側に多発する円形の紅斑は左右対称にみられる。

このように薬剤服用中に副作用が両側性臓器、器官に発生した場合には99.9%その薬剤による副作用と断定することが出来る。

しかし、例外もあるようでバイアグラのような勃起機能不全薬での副作用に聴力損失があることが報告されていね。 J.Laryngology & Otology April 2007

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